介護した義父の遺産、もらえる? 認定のハードル高く弁護士 志賀剛一

しかし、その適用要件は大変厳しく、
(1)療養看護の必要性(入院していたり完全看護の施設に入っていた場合には否定されます)
(2)特別の貢献(親族間には扶養の義務がありますので、寄与と認められるためには、通常の義務の範囲を超えた特別の貢献が必要と解されています)
(3)無償性(被相続人から寄与の対価が払われていたとすれば、相続財産を維持・増加させたことになりません)
(4)継続性(最低1年以上)
(5)専従性が必要
と言われています。

この中でも(5)の専従性のハードルがかなり高いのです。昼間はパートに出ていて、ヘルパーさんに見てもらっていたが、夜は介護していたようなケースでは、なかなか認められません。専業主婦の場合であっても、他の家族とは別に被相続人用の食事を作っていた、衣服の洗濯をしていたという程度では該当しません。

2000年に介護保険制度が施行され、デイサービスなどの利用により同居する家族介護者の負担はかなり軽減されてきたといわれていますが、寄与分は認められにくくなります(だからといってデイサービスを利用しないのは本末転倒だと思いますが)。

看護・介護の有資格者への報酬を前提

もちろん、これらのハードルをすべてクリアして寄与分が認められる例もあります。その場合の金額はどうなるのでしょうか。

家裁は、介護保険における介護報酬基準の定める報酬相当額×療養看護日数×裁量割合で計算します。介護報酬基準等が看護・介護の資格を有している人への報酬を前提としており、親族と資格を持ったヘルパー(プロ)とは報酬額も異なるという考え方に基づき、裁量割合(0.5~0.8の間であることが多い)をかけて金額を調整しているのです。

ごくごく単純化した計算ですが、例えば報酬相当額が1日当たり5000円で1000日間療養看護を行った場合、5000円×1000日=500万円になり、家裁が裁量割合を0.7と定めた場合、500万円×0.7=350万円ということになります。

遺言作成が確実

特別寄与料制度ができたことは大きな前進ですが、なかなか認定が容易でないのは述べてきたとおりです。お世話をしてくれた人の貢献を正当に評価し、その人に一定の金銭を残そうとするのであれば、判断能力が低下する前に遺言を作成しておくのが確実です。

志賀剛一
志賀・飯田・岡田法律事務所所長。1961年生まれ、名古屋市出身。89年、東京弁護士会に登録。2001年港区虎ノ門に現事務所を設立。民・商事事件を中心に企業から個人まで幅広い事件を取り扱う。難しい言葉を使わず、わかりやすく説明することを心掛けている。08~11年は司法研修所の民事弁護教官として後進の指導も担当。趣味は「馬券派ではないロマン派の競馬」とラーメン食べ歩き。