入社してからは、実際に若いうちから活躍のチャンスがあった。ある大型入札案件で、競合は幹部社員がぞろりと並ぶなか、まだ入社したばかりの柿本氏がプレゼンテーションをするという場面もあった。「営業として働き、2年目には約2億円の大型案件を受注した。ビジョンやストーリーから、顧客のために最も早く問題解決するノウハウを吸収することができた」と話す。当初公言していた通り、会社を辞めて起業すると申し出た。強く引きとめられたが、自分の意志を貫いた。

少人数での交流にこだわり

2013年6月に京都に戻り、3人で起業した。しかし、資金はない。同志社大学の前の好立地にカフェを構えるには工事費など850万円のコストがかかる。あるのは起業のアイデア、「学生と企業の接点の場を提供し、キャリア支援をしたい」という思いだけ。300社以上に資金提供を呼びかけて回ったが、多くの会社は「面白いけどな」と門前払い。それでも持ち前の粘り強さ、そして就活を変えたいという強い意志が届いたのか、結局25社がスポンサーとなった。三井物産やエイチ・アイ・エス(HIS)など大手企業も資金を提供した。

「企業と学生の交流会はあえて少人数にしている」と語る柿本社長

新卒は3年以内に約3割が辞めるという時代。面接だけで、企業と学生側の意思疎通が図れるわけではない。企業側も学生との効果的なマッチングの必要性に迫られていた。同志社前に現れたカフェはたちまち話題のスポットになった。

「企業の担当者と学生の交流会は1人対5人に限っている。企業の一部にはもっと学生の人数を増やしてほしいという要望もあるが、それだと学生側は自由に質問をすることができなくなる。僕が経験した5人乗りのクルマの中の空間を再現している」という。

企業と学生のニーズが一気に高まり、京都大学、そして東大、早稲田大学、慶応義塾大学など有力大学の前に次々カフェをオープン。各店舗はすべて学生アルバイトが主体となって運営している。現在、国内外で25店舗だが、スポンサー企業は約150社に上る。対象となっているキャンパスの学生の合計数は約25万人だが、キャンパスによっては約6割がカフェを利用して、登録メンバーとなっている。企業側はカフェに備えられたデジタルサイネージの画面に企業のロゴやCMを逐次表示できるほか、適宜交流会やイベントを開ける。各交流会の開催日時は登録されたスマホで情報を提供されるという仕組みだ。

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