クローゼットの奥に打ち捨てられたような、古いレインコートがあることを思い出した。それこそがピーターの思うコロンボの印象にぴったりだったんです。その古いレインコートに合わせて、ネクタイは捨てようと思っていた、くすんだグリーンの1本を締めた。さらには、他の衣装も自前でそろえてしまいました。彼自身が著した『ピーター・フォーク自伝』には、そのように出ています。

この1着、ここでは「コロンボ・コート」と名づけたいのですが、ピーター自身はあくまでも「レインコート」だと考えていたらしいのです。でも、レインコートにしては少し丈が短かすぎるように見えますが。

余談ですが、足元にはイタリア製のショート・ブーツを合わせました。これもむかし、ピーターがイタリアで買った古物であるとのことです。

もしコロンボが月並みな刑事の服装だったら、あれほどのヒット作品になったでしょうか。疑問です。あたかも隣のおじさんのように思えたから親近感が湧いたのではないか。

■和製英語「ステンカラー」の語源を探ると…

さて、そのコロンボ刑事のレインコートは、日本では俗に「ステンカラー・コート」などといわれます。「国語辞典」にも「服飾事典」にもちゃんと出ています。が、「ステンカラー」がれっきとした和製英語であることは間違いありません。「そのつづりは?」と問われると困ってしまいます。「ステンカラー」に相当する英語自体存在しないのですから。

そもそもファッション用語には和製英語をはじめ、あやふやな言葉が多い。中でも「ステンカラー」は謎に満ちた用法なのです。ここはひとつ、コロンボ刑事に推理してもらいたいところであります。

「それから洋服は近年水兵型すたって、襞付背広のステンカラーと云う詰襟の折り返ったものの流行となった」

若月紫蘭が明治44年に発表した「東京年中行事」の一節に、そのように出ています。

これは明治中期の「七五三」の服装変化を述べたくだり。私は今のところこれ以前の書物に「ステンカラー」の文字を見つけられてはいません。

ここでの「水兵型」は、セーラー・カラーのことであり、セーラー・カラーに代わって「ステンカラー」が登場してきたという説明なのでしょう。

若月紫蘭の本業は、明治の劇作家。服飾の専門家ではありません。この部分、たぶん洋服屋での聞き書きなのでしょう。つまり、洋服屋の仲間言葉だった可能性があるわけです。

いわゆる「ステンカラー」の要は、両用襟であること。第1ボタンを留めても、外しても着用可能。洋服の職人たちは、作業の途中で純粋なる詰め襟と区別するために、襟元にチャコか何かで線を引いておいたのでは。もちろん完成したら、チャコの線は消しておく。

つまり色のついた線を引いてある襟。そこから職人用語として「ステインド(着色された)・カラー」なる言葉が生まれ、そして職人から職人へ仕事を手渡す時、「おぅ、こいつぁ、ステンカラーだぞ……」。これで、難なく通った。そんな経緯も想像できます。

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