年金「大幅減」に潜む誤解 実質額、代替率ほど減らず老後のお金 財政検証(下)

公的年金の財政検証では現役男性の平均手取り賃金に対する年金額の比率である「所得代替率」が低下を続ける傾向が明らかになった。ただ財政検証の読み解き方はかなり難しく、誤解も多い。例えば今の物価に換算した年金額そのものは、実は所得代替率ほど大きく減らないことはあまり知られていない。老後の資金設計には正確な理解が大切だ。

厳しめのケースを例に

厚生労働省がモデル世帯としている会社員と専業主婦夫婦の65歳時点の年金月額は2019年度で22万円。現役の平均手取り賃金が35.7万円なので所得代替率は62%だ。財政検証では経済の状況で異なる6パターンで今後この所得代替率がどう変わるか示した。

グラフAではそのうち下から2番目にあたる厳しめのケース5(実質経済成長率0%、物価上昇率年0.8%、賃金上昇率年1.6%)を例に、現在45歳の人の年金の将来を示した。

受給開始は39年度。賃金上昇が20年続く前提なので現役の平均手取り賃金((1))は40万円だ。しかし年金額((2))は微減の21万円。本来、年金は賃金・物価の変化に応じて増減するが、年金財政の健全化のために伸びを抑える「マクロ経済スライド」で抑制されるからだ。65歳時点の所得代替率は52%に低下する。

今の物価に換算した年金額

第一の誤解はこの21万円という金額の意味だ。「大半の人は物価上昇によってかさ上げされた名目額と誤解している」(社会保険労務士の高橋義憲氏)

実際は、財政検証が示すのは物価上昇を割り引いて19年の物価に換算した金額だ。つまり年金の「モノを買う力=購買力」は今の22万円から21万円へ微減となるだけ。所得代替率が2割弱減るのは、分母である手取り賃金が長年の間に少しずつ大きくなる結果だ。

所得代替率は受給開始後も低下を続ける。受給開始から30年経過した時点の予測は38%。現在の65歳の62%に比べると約4割もの下落となる。

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