自分の介護、どう備える 貯金を軸に民間保険で補完

2019/9/14
写真はイメージ=PIXTA
写真はイメージ=PIXTA

将来、介護が必要になったときのお金が心配です。公的な介護保険制度だけで大丈夫でしょうか。自分で準備は必要ですか。

◇ ◇ ◇

介護保険制度は2000年に始まりました。要介護・要支援の認定者は19年5月末時点で659万人(暫定値)。高齢化に伴い、政府は介護給付費が18年度の10兆7千億円から25年度に15兆3千億円になると試算しています。

財政負担を抑えるため、すでに介護給付を抑制する制度改正は始まっていて、今後も介護保険の利用者負担は増える見込みです。自己負担の割合は年金収入などに応じて決まります。現在は受給者の9割が1割負担にとどまりますが、大和総研の石橋未来氏は「2、3割負担の対象者が拡大する」と指摘しています。

私的な準備の必要性は高まっていますが進んでいないのが実態です。生命保険文化センターが16年に実施した調査によると、介護について民間保険や預貯金で準備している人の割合は48%。医療保障の84%、死亡保障の74%に比べ、低い水準です。介護は家族が担ってきたことなどが要因ですが、単身世帯の増加や少子化で外部サービスに頼る場面は増えていくでしょう。

生命保険文化センターによると、介護費用の自己負担額は平均で月7万8千円、介護の期間は同4年半でした。ばらつきが大きく一概にはいえませんが、掛け合わせると400万円強になります。これとは別に自宅のリフォームなど一時的な費用も平均で80万円近くかかっています。

ファイナンシャルプランナーの新美昌也氏は、負担を減らす手段として地域のサービスを活用するよう助言しています。訪問や通所介護といった国の保険が使えるサービスとは別に、自治体によってはリフォームへの助成や低価格での配食など手厚い支援を行うところもあります。

その上で新美氏は介護費について「基本は預貯金で備える」ことを推奨します。働き盛りの間は自分が要介護状態になると想像しづらく、準備開始は遅れがちです。民間保険で備えようとすると、年齢が上がれば保険料も高くなるからです。早めに介護に備えた貯蓄を意識しておくことが大切といえます。

ただ、介護してくれる家族がいない場合などは有料老人ホームなどの介護施設に入居し、多額の一時金がかかるなど不安が残ります。こうした事態に備えるためには民間の保険に入ることも選択肢となります。

民間保険では国の要介護認定に連動して受け取れる商品が一般的で、要介護2以上が主流です。保険会社独自の基準で給付を決めるものもあります。保険金の受け取りは年金と一時金の形があるので、継続的な出費かまとまった費用のどちらに備えるかで選別しましょう。介護に特化したもののほか、死亡・高度障害なども併せて保障する商品もあります。

要介護となる理由の上位には脳血管疾患や骨折などのケガが並びます。新美氏は「生活習慣病や転倒を防ぐことも大事な備え」と指摘しています。

[日本経済新聞朝刊2019年9月7日付]