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フランス美しき5都市の旅 パリにない魅力とは?

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

2018年、フランスの首都パリには、なんと3500万人の旅行者が訪れたという。パリ、そしてパリを愛する人々にとって、ひっきりなしに観光客が押し寄せるオーバーツーリズムは現実の問題だ。パリに引き寄せられるのも無理はないが、フランスには魅力的な都市がまだいくつもあることを忘れていないだろうか。

フランスへの旅行を計画するなら、パリへの愛をフランス全土に広げてみよう。ここで紹介する5つの都市はいずれも、歴史、料理、ワイン、買い物、芸術、文化を十分に提供してくれる。もちろん、言葉では表現できない「フランス独特の雰囲気」もあるので、フランスびいきが満足すること請け合いだ。

アルル

フィンセント・ファン・ゴッホはアルルを愛し、1888~1889年、アルルで暮らしながら、印象的な傑作を次々と生み出した。ユネスコの世界遺産に登録されているローマ遺跡とロマネスク様式建造物、雰囲気のある街並み、1年のうち300日も太陽が降り注ぐ気候。ゴッホがアルルに魅了された理由がよくわかる。ウオーキングツアーマップをダウンロードし、ゴッホが描いた場所を巡るか、フィンセント・ファン・ゴッホ財団に立ち寄り、ゴッホの作品を鑑賞するのがおすすめ。イタリア、ローマのコロッセオをモデルにした2階建ての円形闘技場では、ショーやコンサートを楽しめる。夏の火曜日には、戦車競走や剣闘士の戦いをテーマにした演劇やスポーツイベントが開催される。

【旅のヒント】
タコ&コーが電動アシスト付き人力車ツアーを提供している。駅との往復に利用すれば、荷物と一緒に運んでもらえる。

ストラスブール

フランス北東部アルザス地方のストラスブール(現在はグラン・テスト地域圏の首府)は、フランスとドイツの文化が完全に溶け合った街。世界遺産に登録されている市街地は中州になっているため、中世の街並みを眺めるには、ボートツアーに参加するのがおすすめだ。ただし、プティット・フランス地区に到着したら、ぶらぶら歩いてみよう。

石畳の道、アーチ橋、窓際に花が飾られた木組みの家など、美しい風景が待ち受けている。シュークルト(ザワークラウト)、フラムクーヘとも呼ばれるタルト・フランベなど、名物料理にも、ドイツとフランスの歴史が見て取れる。タルト・フランベはピザに似た料理で、薄いサクサクの生地にフロマージュ・ブランやタマネギの薄切り、ベーコンが乗せられている。12月に訪問すれば、ゴシック様式のストラスブール大聖堂とその一帯がスノードームのような景色に変わる。有名なクリスマスマーケットも始まり、街全体がクリスマスムードに包まれる。

【旅のヒント】
サイクリングルートが整備されており、史跡や公園を周遊するといいだろう。ストラスブールで最も緑が多いオランジュリ公園には、アルザス地方のシンボル、コウノトリの保護区もある。

ディジョン

ディジョンは、かつて強大なブルゴーニュ公国の首都だった。その豊かな歴史は、中世の建造物やルネサンス様式の意匠に残されている。美食の街としても知られ、たくさんのビストロやミシュランガイドの星を取ったレストランがしのぎを削り、ブルゴーニュ地方の郷土料理を提供している。

14世紀に建造されたブルゴーニュ公爵宮殿の一部は、ディジョン美術館として利用されている。宮殿前の広場には噴水が並び、子供たちも水遊びを楽しめる。2015年、ブルゴーニュ地方の特級(グラン・クリュ)ブドウ畑が世界遺産に登録された。ディジョンはワイン愛好家の拠点としても最高だ。車に乗り込み、グラン・クリュ街道のドライブに出掛けるか、ディジョンの街にあるル・キャブー・ドゥ・ラ・シュエットなど、くつろいだ雰囲気のワインバーを訪ねてみるといい。

【旅のヒント】
マイユのブティックでは、世界的に有名なディジョン・マスタードをその場で注いでくれるが、地元の家庭でつくり方を教わり、本物のディジョン・マスタードをお土産として持ち帰るのがおすすめだ。

リール

パリとベルギーの首都ブリュッセルから近く、高速鉄道ユーロスターで英国の首都ロンドンともつながっているが、シャルル・ド・ゴール元大統領の生誕地リールは、フランスの最もよく守られている秘密かもしれない。フランドル伯領の商業の中心地だったこともあり、現在も買い物好きにぴったりの街だ。グランド・ショセ通りには、エルメスやルイ・ヴィトンといった高級ブランドのブティックが立ち並び、9月最初の週末には、ブラドリー・ドゥ・リールが開催され、街全体が巨大なフリーマーケットに変わる。

ラ・ビエイユ・ブース(旧証券取引所)は17世紀の巨大な建物で、月曜日を除く毎日、古本市が開かれている。芸術に触れたい人は、フランス最大級の美術館であるリール宮殿美術館を訪れてみるといい。多数の傑作を所蔵しているため、わざわざルーブル美術館に足を運ばなくてもよりと思えるはずだ。

【旅のヒント】
リールのシティーパスを購入しよう。美術館を含む29の施設に入れるほか、公共交通機関の利用が無料になる。

トゥールーズ

建物に使われている石の色から、バラ色の都市とも呼ばれる。フランス南西部にあるこの街を訪れれば、すべての人が何かを得られるだろう。国内外の学生が数多く暮らすこともあり、タパス(評判が良い店はボデガ・チェ・ビンセンテ)や飲み物(人気店はシェ・トントン)は選ぶのに迷うほどだ。世界遺産も2つある。クルージングが人気のミディ運河とヨーロッパ最大のロマネスク様式建造物サン・セルナン大聖堂だ。

晴天が多いため、地元の人々にならって、ガロンヌ川の河川敷で日光浴するのもおすすめ。ピレネー山脈も列車で2時間足らずの距離にあり、ハイキングやスキーに最適だ。何より、カスレを食べることだけは忘れてはいけない。トゥールーズのソーセージ、白インゲンマメ、ガチョウのコンフィが入ったずっしり重い煮込み料理だ。マルシェ・ビクトル・ユゴーに行けば、カスレをはじめとする郷土料理を味わえる。

【旅のヒント】
市街地からバスに乗れば、宇宙の街シテ・ド・レスパスにわずか30分で到着する。さまざまな展示や特別プログラムを通じ、最後の未開拓地である宇宙の驚異を紹介するテーマパークだ。

(文 KIMBERLEY LOVATO、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2019年8月16日付記事を再構成]

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