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だしを料理ごとに使い分け、和食を気軽に 東京・銀座

2019/9/16
アンティークの朱塗りの椀に盛られた「すっぽん仕立て」

アンティークの朱塗りの椀に盛られているのは、吉武さんが得意とする「すっぽん仕立て」。スッポンは焼いても鍋でもおいしいが、今回はスープを楽しむにゅうめんである。

骨、甲羅、頭に加え、おいしいスープがたっぷり出るよう、具材には使用しない身の部位からもだしを取っている。ほんのり脂が浮いた透明なだしは、時間も手間もかけたたまもの。コクがありながら、どこまでも上品な味は、スッポンにしか出せないおいしさだ。

椀種に使っているのは腕と首の肉、エンペラ(甲羅の周り部分)。いずれも味を出しきらないように、別鍋で調理してからだしと合わせている。プルプルとした独特の食感がたまらないエンペラは、コラーゲンのかたまりそのもの。淡泊な味わいのスッポンの身は滋味豊かで、しみじみとしたおいしさが体にしみ渡る。

もう一つの椀種はソウメン。絶品スープを最後まで楽しく味わうための名脇役だ。

焼き物は「甘鯛 椎茸、万願寺とうがらし」

焼き物は「甘鯛(アマダイ) 椎茸(シイタケ)、万願寺とうがらし」。身が軟らかく、上質な甘みを持つアマダイは高級魚だ。

アマダイと野菜を盛り付けた椀には、骨とカツオ節からとっただしに、薄口しょうゆでほんのり味付けしたつゆが注がれる。つゆから漂うのはオリーブオイルの香り。だしとオリーブオイルは相性抜群で、ほんのわずかにたらしたオイルがだしにコクとフレッシュな香りをプラスしている。

アマダイは薄く塩を振って、皮目から炭火で香ばしく焼いていく。付け合わせの万願寺トウガラシはそのまま、シイタケは香ばしさを出すために、しょうゆを塗ってからあぶっている。

炭火で焼いたアマダイの皮はパリッと香ばしく、身はしっとりとふくよか。淡いながらもうま味たっぷりのつゆが、身の甘さを引き立ててくれる。

そして、この店のスペシャリテは、コースの締めくくりに出される「ご飯」かもしれない。

使用するのは山形県産のコメ「夢ごこち」をメインに長野県産、宮崎県産の3種類をブレンドしたもの。甘みやコシの強さ、あっさりした風味などそれぞれのコメの良いところが調和し、食べ疲れしない、コースの締めくくりにふさわしいご飯となっている。

目の前のカウンター内でシュウシュウと蒸気を上げて炊きあがるご飯。茶わんにふんわりと盛られると、炊きたての香りが鼻腔(びこう)をくすぐる。

コメひと粒ひと粒がツヤツヤと光り、ブレンドすることで生まれた程よい甘みと粘り、食感のバランスが絶妙。しっかりとしたうま味があるため、冷めてもおいしい。

土鍋ご飯は店をオープンした時から力を入れてきたそう。しかし、「オープン当初はコースの品数が多く、せっかく土鍋で炊いても、ご飯まで食べきれないお客さんが多かったんです」(吉武さん)。

そこで、コース料理の品数やボリュームを押さえる代わりに、天ぷらや刺し身など、少し豪華な「ごはんのお供」を付けることを考えた。

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