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著者に聞く 仕事の風景

個別指導塾の社長に学ぶ 20代が動く言葉の伝え方 『共創のリーダーシップ』 齋藤勝己氏

2019/9/11

齋藤勝己氏

若い講師たちとの対話にあたって大事なのは「働く仲間同士」という意識だ。前置詞で表せば「with」。あくまでも人と人との関わりと考え、企業メッセージの一方通行は避ける。上司や先輩という「立場」「役割」の意識が出てしまいがちで、なかなか難しい気もするが、「ここでボタンを掛け違うと、対話も共感も成り立たなくなってしまう」(齋藤氏)。

今の20~30代を「ワンピース世代」と表現することがある。彼らは漫画『ワンピース』が描く仲間同士のつながりを重んじるからだ。組織主義、上下関係を嫌う傾向もあるとされる。齋藤氏は20~30代のこうした気質を理解したうえで、「受け入れることが肝心」と上の世代に促す。

「ワンピース世代」は、同じ目標に仲間と協力して向かう場合に大きな力を発揮する。だから力を合わせやすい環境や共有できる目標を用意することによって「エンパワーメントが可能になる」(齋藤氏)。それぞれが自分の強みを生かせる仕組みも欠かせない。「もはやリーダーの仕事は束ねることではない」と考える理由だ。

■学習塾は集団指導から個別対応へ

「横のつながり」を信じるのも、今の20代に共通する意識だ。アルバイトや就職に関する情報はSNSを通じて瞬時に広まる。東京個別指導学院が講師の採用に困らないのも、現職の講師が仲間に実感を伝えているところが大きいという。講師経験者がそのまま就職志望者になるケースが目立つのも同社の強みだ。「先輩が後輩にすすめるパターンも多い」(齋藤氏)。お仕着せではない仕事が共感の連鎖を広げる。

同社のビジネスモデル自体が個々の尊重を象徴している。かつての学習塾は集団指導が当たり前だった。しかし、同社は個別指導塾に特化する道を選んで成長軌道に乗り、東証第一部上場も果たした。「今はone-to-oneの時代。働く仲間とも一人ひとりとの対話が求められる」(齋藤氏)

教室長の経験は、対話の大切さを教えてくれたという。1教室には平均40人の講師が籍を置く。教室長は授業を受ける生徒の希望や資質を頭に入れたうえで、各講師の個性を見極め、両者の最も好ましいマッチングに向けて仲立ち役を務める。講師を選ぶのは、あくまでも生徒の側。ただ、見守る教室長の責任は大きい。「誰が教えるか次第で、生徒のやる気は全く変わってくる。講師、生徒双方の個性を知るには、対話しかない」(齋藤氏)

上司や先輩が20代後輩に難しさを感じるのは、自分たちが親しんできた旧来の論法が通じにくいせいでもあるだろう。残業拒否に象徴される「マイペース」の態度は、上司・先輩からは「異分子」と映りがちだ。逆に、上司は若手からは「上から目線」「押しつけ」と嫌われやすい。

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