個別指導塾の社長に学ぶ 20代が動く言葉の伝え方『共創のリーダーシップ』 齋藤勝己氏

自ら教え方を工夫する講師は子どもと一緒に成長する。画像はイメージ=PIXTA
自ら教え方を工夫する講師は子どもと一緒に成長する。画像はイメージ=PIXTA

採用難が日本企業のネックになっている。大学生や新入社員の扱いに悩む上司・先輩も珍しくない。そんな時代に東京個別指導学院の齋藤勝己社長は、大半が大学生である講師1万1千人を戦力化してうまくビジネスを展開している。『共創のリーダーシップ』(扶桑社)を書いた齋藤氏に、個別指導塾の経営で実践している「20代を動かす向き合い方」を聞いた。

現場に任せることの大切さ

宴席でのお約束だった「とりあえずビール」が通用しなくなっている。「カシスオレンジ」「スパークリングワイン」など、1杯目から好きな飲み物を選ぶ20代が増えてきたという。「そもそも価値観は人それぞれで多様。個性を重んじ、違いを受け入れる度量が上司や経営者側に求められる時代」と、齋藤氏は懐の深い応じ方の大切さを説く。同じ飲み物に注文を束ねる発想自体が古くさくなっているようだ。

しかし、企業体として動く場合、働き手が好き勝手に別の方向へ走るのを野放図に許すわけにはいかない。一定範囲での指揮命令系統は必要だ。齋藤氏が提案するのは、「ビジョンの共有」だ。箸の上げ下ろしのような、業務の細部まで会社側が決める必要はない。むしろ、講師自身が考えて動く機会を提供することによって、成長を実感しやすい仕組みを同社は用意している。

企業が期待する将来の成果や事業のイメージをビジョンの形で共有し、細部は個々に任せるという重層的な仕組みは「働き手のモチベーションを引き出しつつ、ビジネス成果につなげやすい」という。同社では講師の85%を占める大学生とのビジョン共有に努める一方で、個別の授業の組み立てはほぼ各教室と講師に任せている。増収増益が続いていることについて齋藤氏は「各教室の取り組みの総和」とみる。現場に任せることによって、やる気や創意工夫を引き出すのが同社の流儀。だから、講師の応募が引きも切らないのだという。

齋藤氏は転職経験者だ。教育業界に転じる前には老舗ホテルとして有名な富士屋ホテルに勤めていた。中央大学を卒業後、新卒で富士屋ホテルへ。約10年の勤務を経て、東京個別指導学院に入社した。以後は教室長、エリアマネージャーなどを歴任。2014年から社長に就いている。「日本を代表するクラシックホテルでの勤務では、ホスピタリティーを知るうえで深い学びが得られた」と、齋藤氏は振り返る。

上下関係より仲間意識

ホテルでは「お客様のためにチームで動く」(齋藤氏)。ドアマンだけ、清掃係だけが個別にスタンドプレー的な妙技を披露しても意味はなく、誰かの手抜かりがホテル全体の評価を下げる。このホスピタリティーの基本ルールは東京個別指導学院の働き方を磨き上げるのにも生かされているという。

講師との信頼関係を築くために齋藤氏が重視しているのは、丁寧な対話だ。「心が通う対話」と齋藤氏は表現する。言い換えれば「傾聴力」「共感力」だ。子供でもおかしくないほどに年齢が離れた20代前半であっても、企業側からの押しつけを避け「まずは聞く、受け取る」(齋藤氏)。対話はその次だ。

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