長期金利急低下 マネー集中に制度要因(武者陵司)武者リサーチ代表

写真はイメージ=123RF
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世界で長期金利の低下が進んでいる。ドイツの長期金利の指標となる10年物国債利回りは8月下旬にマイナス0.7%まで低下(債券価格は上昇)した。日本の10年債利回りもマイナス金利で推移し、米国では10年債利回りが2年債利回りを下回る「逆イールド」が発生した。

債券の値上がりは超長期債で一層鮮明になっている。8月20日付の米ウォール・ストリート・ジャーナルは、オーストリア100年国債の年初来のドルベースリターンが68%に達し、日本40年国債は28%、ドイツ30年国債は28%、米国30年国債は27% になるとの試算を紹介した。債券は額面価格で償還されるため、値上がりした債券を購入して満期まで保有すれば確実に損失になる。価格上昇局面で債券を購入する投資家はさらに値上がりしたところで売却することを狙っているとみられるが、長期債や超長期債がこうした高値まで買い上げられるのは投機の色彩がかなり強く、「債券バブル」ともいえるだろう。

足元での長期金利の急低下は米中貿易摩擦の長期化に伴い世界景気の悪化懸念が強まり、安全資産とされる国債にマネーが集中したとの解釈が一般的だ。もちろんそうしたリスク回避の面はあるだろうが、筆者は制度・政策による構造的な要因が見逃せないとみている。

国際金融規制は「債券優遇」

まず指摘したいのは「バーゼル規制」である。バーゼル銀行委員会が各国の銀行に適用を求める自己資本比率規制では、保有資産のリスクの大きさに応じて一定の資本を積む必要がある。銀行経営の安定を目的に1990年代に導入され、08年のリーマン・ショックもあって規制は強化される流れにある。同規制で国債はリスク資産に含まれない(リスクウエートはゼロ%)が、株式のリスクウエートは現在100%、中期的には250%まで引き上げられることになっている。銀行が株式を持てばリスクが高まるので資本を増強しなければならない。つまり資本を増やさないとすると株式保有は制限される半面、自己資本比率の低下につながらない国債はいくらでも保有することが制度上はできる。