建築委員の有山智雄教諭は、寄付金について意外な事実も教えてくれた。「15年に新校舎の基本設計が決まり、寄付金の募集を始めました。1口1万円からで、10口以上寄付すると銘板に名前を刻む仕組みです。でも、出足は悪かったんですよ。特に30~40代の卒業生は子育てでもお金がかかる時期です。母校のためとはいえ、寄付をするには家庭内稟議(りんぎ)を通す必要があり、これがなかなか難航するのだそうです」。母校も大事だが、家庭円満も大事。賢明なバランス感覚である。

一足先に人工芝が敷かれた第2グラウンド

卒業生たちの期待を背負う新校舎には、最新の機器や使い勝手のいい施設が設置されるだけでなく、生徒たちが自由に動き回れる動線設計がなされているという。高校校舎には3階分の吹き抜けを囲むように教室が配され、生徒が自由に使えるオープンスペースも多い。有山さんは「生徒たちが、どのスペースをどう活用してくれるのか、とても楽しみです」と話す。

「学校として『○○を目指す!』というのは、自由な開成の校風にそぐわない。行き先は、生徒たちが決めてくれればいい。今回の私たちの仕事はどこにでも行ける『船』をつくることだとイメージしました。しっかりしていて、どこまでも行けるような船です。その真価は乗り込んだ生徒たちがどこへ向かうか、どんな旅をするかで決まるはずです」(有山さん)

「開成の未来を創る」のはほかでもない、生徒たち自身であるというメッセージ。「あいつらはすごい」と、教員が生徒を尊敬する学校。それが開成である。

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開成中学校・高等学校(東京都荒川区)
 創立は1871年。1982年以来38年連続で高校別東大合格者数首位にある。高校の1学年は約400人。2019年の東大合格者数は186人。東大・京大・国公立大学医学部合格者数は、19年まで5年間の平均で238.2人とこちらも首位。卒業生には、衆院議員の岸田文雄氏、マネックス証券の松本大氏、演劇家の蜷川幸雄氏らがいる。

新・男子校という選択 (日経プレミア)

著者 : おおたとしまさ
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 935円 (税込み)

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