秋に色づく木々にうっとり 紅葉の映える並木道10選
黄や赤の葉が、季節の移り変わりを教えてくれる。
秋本番を前に、紅葉の映える並木道を専門家が選んだ。
1位 神宮外苑のイチョウ
計算され尽くした美しさ
東京を代表する並木道。ビルが立ち並ぶ青山通りから明治神宮外苑の聖徳記念絵画館に向かって約300メートル続く。道路を挟んで2列ずつ、樹齢110年といわれる146本のイチョウが並ぶ。4年に1度、円すい形に剪定(せんてい)され、遠近法を応用して絵画館をより遠くに大きく見せるようにするなど「間隔や背丈など計算され尽くした並木で素直に美しい」(寺澤秀治さん)。
イチョウの木と歩道に落ちたイチョウの葉がつくる黄金色のトンネルは、映画やドラマの撮影場所にも使われる。道沿いに並ぶカフェなどとの相乗効果もあいまって「どこか外国にいるような気分を味わえる」(沼田阿友美さん)。
周辺では2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた工事が進む。「オリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場が完成すると、さらに名所としての価値が上がりそう」(高橋俊宏さん)
(1)例年の見ごろ時期 11月下旬から12月上旬(2)最寄り駅 東京メトロ銀座線外苑前駅、青山一丁目駅(3)問い合わせ先電話03・3401・0312(明治神宮外苑)
2位 北海道大学のイチョウ・ポプラ
隙間なく黄色の世界
札幌市中心部の北海道大学構内にあり、「北海道開拓の礎となった大学の歴史の重みが伝わる」(大場秀章さん)。一般にも開放されており、「北海道定番の観光地の一つ」(森岡順子さん)にもあげられる。
北13条通りの両側約380メートルに70本のイチョウが植えられた「イチョウ並木」は、黄葉の盛りには「沿道の両側から伸びた枝が重なり、見上げると隙間がほとんど見られないほど黄色の世界になる」(山田隆彦さん)。「学生が中心となって例年10月下旬に開催される北大金葉祭でのライトアップは特に美しく必見」(藤田聡さん)だ。
キャンパス内には、植林から約115年という歴史を持つ「ポプラ並木」(長さ約80メートル)と、北大創基125周年記念事業の一環として2000年に植樹された「平成ポプラ並木」(同約300メートル)もある。「じっくり歩けばイチョウ並木、ポプラ並木を両方とも眺められる」(北嶋緒里恵さん)
(1)イチョウ10月下旬から11月上旬、ポプラ11月上旬(2)札幌市営地下鉄南北線北12条駅(3)011・706・4680(北海道大学インフォメーションセンター「エルムの森」)
3位 定禅寺通のケヤキ
アート作品とのコラボ
勾当台(こうとうだい)公園から西公園にかけて、緑地帯と歩道の両脇に、約675メートルにわたって続く。樹齢75~90年のケヤキ166本が4列並び、「杜(もり)の都」仙台のシンボル的な存在だ。「色づき度合いが深紅色、薄紅色、黄色と一本一本異なり、遠めに見ても並木の中を歩いても、グラデーションが美しい」(富本一幸さん)
中央分離帯がそのまま遊歩道になっている。ところどころにブロンズ像などの彫刻が置かれ「アート作品と秋の色合いとのコラボレーションが印象的」(藤田さん)。ベンチも備え、「休憩しながら歩けばのんびりと秋を満喫できる」(寺澤さん)。
1967年には電線を地中化するなど道路空間の整備に気を配っており、「沿道にある仙台市の複合文化施設『せんだいメディアテーク』のガラス張りの壁面に映り込む紅葉シーンもたまらない」(高橋さん)。
(1)11月中旬(2)仙台市営地下鉄南北線勾当台公園駅(3)022・225・7211(仙台市青葉区公園課)
4位 マキノ町のメタセコイア
幻想的 まるで仏映画
琵琶湖の北西に位置する旧マキノ町(現高島市)に約2.4キロにわたって植えられた約500本のメタセコイア。葉が赤茶色になる紅葉期は「まるでヌーベルバーグ期のフランス映画に出てくるような希少な風景」(北嶋さん)。
地元の人々が保全・管理しているメタセコイアは「密集度が秀逸。並木にさしかかると、幻想的なトンネルをくぐっていくよう」(寺澤さん)。野坂山地の山々と調和した風景も見どころで「一直線の道路はドライブでもサイクリングでも爽快」(富本さん)。紅葉シーズンは駐車場も含めて混雑する。
(1)11月下旬から12月上旬(2)JR湖西線マキノ駅(3)0740・33・7101(びわ湖高島観光協会)
5位 角館武家屋敷通りのモミジ
たたずまいに日本情緒
秋田藩の支藩、佐竹北家の城下町だった角館。藩政時代からの武家屋敷が残る街並みにシダレサクラ、モミジ、カエデ、イチョウなどが植えられ、「曲がり角の向こうにまた別の秋の景色が待っている」(北嶋さん)。
手入れの行き届いた黒板塀に計算されたようにしなだれかかる紅葉を眺めると「江戸時代にタイムスリップしたかのよう」(森岡さん)。樹木ごとに異なる色とりどりのたたずまいは「日本情緒を感じる」(沼田さん)。10月から11月にかけてライトアップも予定されている。
(1)10月下旬から11月中旬(2)JR秋田新幹線角館駅(3)0187・54・2700(仙北市観光情報センター「角館駅前蔵」)
6位 河口湖のカエデ
土手が赤いトンネルに
河口湖北岸には約200本のカエデが並ぶ約1キロの「もみじ街道」がある。その先の土手には60本のカエデが植えられた「もみじ回廊」があり、紅葉の季節には赤いトンネルが堪能できる。「紅葉した並木のバックに、雪化粧した富士山の雄姿を青雲の空に望む」(野村郁子さん)という色鮮やかな絶景が広がる。
例年11月には湖畔で「富士河口湖紅葉まつり」が開かれ、飲食などの出店でにぎわう。夜はライトアップされ「夜空に浮き上がる紅葉が、シックな大人の秋のデートにいい」(北嶋さん)。
(1)11月中旬(2)富士急行河口湖線河口湖駅(3)0555・72・3168(富士河口湖町観光課)
7位 国営昭和記念公園のイチョウ
水路に黄金のさざ波
東京ドーム約39個という広大な公園には日本庭園のカエデなど見どころが多い。立川口近くの水路を使った広場「カナール」では106本のイチョウが水路を中心に左右対称に植えられ、水面に黄金のさざ波が立つように見える。「イチョウが四角く剪定して手入れされ、シンメトリーな景観が絶景」(藤田さん)
うんどう広場の横、98本のイチョウが並ぶ「かたらいのイチョウ並木」では、黄金色のトンネルをくぐっているような気分が味わえる。11月には「黄葉・紅葉まつり」が開かれ、ライトアップも楽しめる。
(1)11月(2)JR青梅線西立川駅(3)042・528・1751(国営昭和記念公園)
8位 万博記念公園のプラタナス
広い石畳 ボリューム満点
1970年の大阪万博の会場跡地を整備した公園。太陽の塔などが残り「プラタナス、アメリカフウ、カエデ類など色とりどりの紅葉が楽しめる」(野村さん)。
紅葉の時期に歩いて楽しいのが西大路の並木道。樹齢45年のプラタナスが石畳の道の両側に約300本植えられ、「ボリューム満点の形状に切りそろえられ圧巻」(藤田さん)。「通路が広いので堂々とした雰囲気があって圧倒される」(寺澤さん)といい、異国情緒を醸し出す並木道は絶好の写真撮影スポットになっている。
(1)11月上旬から中旬(2)大阪高速鉄道大阪モノレール線万博記念公園駅(3)06・6877・7387(万博記念公園コールセンター)
9位 柳坂曽根のハゼ
葉と実 一幅の絵のよう
江戸時代、久留米藩がろうの材料として植樹したハゼの並木道。約260本が南北に約1.2キロ続き、夕暮れ時には「耳納連山を背景に燃えるような赤い葉と濃褐色の実が一幅の絵のよう」(野村さん)。
地元の努力で保存されてきたハゼの木は高さ5~6メートルで、幹回りは2メートルを超えるものも。「色づく様子が自然で、色彩変化の妙が映える」(大場さん)。11月には並木道が歩行者天国となる「柳坂ハゼ祭り」も開かれ、和ろうそくやハゼの花から取ったハチミツなどが販売される。
(1)11月中旬から下旬(2)JR久大本線善導寺駅(3)0942・33・4422(久留米市観光案内所)
10位 大山参道のイロハモミジ
雨の後は赤いじゅうたん
一帯が日本遺産に認定されている那須野が原。その中にある明治の元勲・大山巌元帥の墓所に続く大山参道は「全国的にも珍しいイロハモミジの並木道」(藤田さん)。樹齢約90年の大木約90本が並び、「意外と知られていない」(高橋さん)という穴場だ。
紅葉の時期には参道を覆い尽くすようなモミジのアーケードに。「雨上がりには真っ赤に色づいたイロハモミジの落ち葉のじゅうたんに目を奪われる」(野村さん)、「朝夕の光が斜めから差し込む時間帯が一層美しい」(富本さん)。
(1)11月中旬から下旬(2)JR東北本線西那須野駅(3)0287・62・7160(那須塩原市都市整備課)
見ごろは10~12月 変わる色楽しむ
秋の楽しみの一つは、色づく木々を眺めること。イチョウの黄色、モミジやメタセコイアの赤。一気に色に染まるのではなく、徐々に色合いが変わっていくことに風情を感じる人も多いのでは。
道沿いに植えられた並木道を通り抜ける爽快感は格別だ。歩いてもよし、車や自転車で走るのもよし。トンネルになっているのか、それとも空を仰ぎ見ることができるのか。足元の落ち葉、道の先にある風景とのバランスなども含めて、並木道の楽しみ方はさまざまだ。
紅葉の時期は地域差が大きい。ランキングに入った並木道でも、見ごろは10月から12月まで幅広い。同じ場所でも訪れた時期や時間帯によっても風景が変わる。「盛りを迎えた時期だけではなく、多彩な色のグラデーションも実は味わい深い」(山田隆彦さん)のも紅葉の魅力だろう。
並木道を管理する自治体などでは色づき具合などの情報を提供している。猛暑だった夏を受け今年の紅葉の状況はどうなのか。ぜひ、問い合わせてから、足を運んでほしい。
◇ ◇ ◇
ランキングの見方 数字は専門家の評価を点数化。並木道の名称(所在地)。(1)例年の見ごろ時期(2)最寄り駅(3)問い合わせ先電話番号。写真は各並木道を管理する団体や自治体、観光協会などの提供。
調査の方法 専門家の協力で、紅葉が映える並木道22カ所をリストアップ。専門家10人に「並木道の長さ」「紅葉のボリューム、色づき」「通り抜けたときの高揚感」などの観点で1位から10位まで順位付けを依頼。編集部で集計した。(伊藤新時)
今週の専門家 ▽大場秀章(東京大学名誉教授)▽北嶋緒里恵(じゃらんリサーチセンター主席研究員)▽高橋俊宏(Discover Japan統括編集長)▽寺澤秀治(フォトグラファー)▽富本一幸(トラベルニュース編集長)▽沼田阿友美(KNT-CTホールディングス国内旅行部)▽野村郁子(福岡植物友の会副会長)▽藤田聡(紅葉ガイド)▽森岡順子(日本観光振興協会)▽山田隆彦(日本植物友の会副会長)=敬称略、五十音順
[NIKKEIプラス1 2019年9月7日付]
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