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いきいき職場のつくり方

残業は万病の元 知らぬ間に高血圧、脳や心臓の病招く 産業医・精神科専門医 植田尚樹氏

2019/9/7

さて、長時間労働の問題は、実際のところ、すぐさま解決するのはなかなか難しいといえるでしょう。負担を軽減するとともに蓄積させないためには、勤務中に適切な休憩を確保し、十分な睡眠と休息を取ることが必要となります。前日の終業時刻から翌日の始業時刻の間に一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル制度」も有効でしょう。働き方改革関連法に基づき、労働時間等設定改善法が改正され、インターバルの確保は事業主の努力義務として規定されています。

■緊張や興奮が続き睡眠不足に

前回「ご注意!朝の熱中症 通勤時に目まい、対策は朝食から」で、自分の意思でコントロールできない、血流や臓器の働きをつかさどる自律神経について触れました。自律神経には、緊張時や興奮時に活動が活発になる交感神経と、リラックス時に活発になる副交感神経の2つがあり、日中は交感神経が、夜は副交感神経が優位に働くというリズムがあります。ところが、深夜まで仕事に追われて残業をしていると、本来の副交感神経に代わり、交感神経が優位に働き、帰宅しても緊張や興奮が続くことになります。すると、寝つきが悪くなったり、熟睡できなくなったり、睡眠不足の原因となりかねません。

睡眠不足は、高血圧や糖尿病、動脈硬化といった生活習慣病や、脳の疲労からくる過労うつなど精神疾患の原因になるともいわれています。さらに、交感神経と副交感神経のバランスやリズムが乱れることで、動悸(どうき)、息苦しさ、めまい、立ちくらみ、頭痛、腹痛、下痢など、自律神経失調状態を来すこともあります。

インターネットの発達で、いつでも、どこでも、パソコンやスマートフォンで仕事ができる環境が整ってきました。時間や場所を選ばず仕事ができるのは、オフィスに縛られず自由な半面、どこまででも仕事に追われることでもあります。そんな時代だからこそ、事業主はもちろん、働き手も意識的に労働時間を管理して、休息を取ることが必要といえるでしょう。

《参考文献》
「長時間労働と健康問題―研究の到達点と今後の課題」労働安全衛生総合研究所 岩崎健二(日本労働研究雑誌 2008年6月)
「長時間労働が心臓血管系に及ぼす影響」独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 劉欣欣 (安全衛生コンサルタント2018年4月)

植田尚樹
1989年日本大学医学部卒、同精神科入局。96年同大大学院にて博士号取得(精神医学)。2001年茗荷谷駅前医院開業。06年駿河台日大病院・日大医学部精神科兼任講師。11年お茶の水女子大学非常勤講師。12年植田産業医労働衛生コンサルタント事務所開設。15年みんなの健康管理室合同会社代表社員。精神保健指定医。精神科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。

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