おいしい非常食「イザメシ」 アウトドアにも便利

日経クロストレンド

非常時のための、おいしく食べる長期保存食「IZAMESHI(イザメシ)」(写真提供:杉田エース)
非常時のための、おいしく食べる長期保存食「IZAMESHI(イザメシ)」(写真提供:杉田エース)
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建築金物を扱う老舗企業の杉田エース(東京・墨田)が、新規事業として目を付けたのは非常食。畑違いにもかかわらず、自社開発した「IZAMESHI(イザメシ)」シリーズが、発売4年で初年度の10倍以上を売り上げるヒットに。「おいしく食べられる長期保存食」というコンセプトが消費者に受け入れられた。

市場調査で分かった「非常食」の欠点

ロフトや東急ハンズなどの防災コーナーで、ひときわ目を引く非常食が「IZAMESHI」シリーズだ。シズル感のある写真と洗練されたデザインのパッケージは、非常食っぽさが感じられない。この商品を開発したのは食品会社ではない。建築金物を扱う杉田エースだ。1948年創業の杉田エースは、全国のホームセンターや金物物販店に建築資材などを販売している会社である。

なぜ本業と異なる分野の食品で新規事業を立ち上げたのか。そのきっかけについて、杉田エース営業企画グループの加藤伶佳氏と福満美穂氏はこう語る。

「2011年の東日本大震災で何か自分たちにできることはないかと思い、現社長の杉田(裕介)と社員数名が被災地を訪問した。現地の避難生活を目の当たりにし、食事の面で満足できていないということを知ったのが、IZAMESHIを開発するきっかけとなった」(加藤氏)。

当時市販されている非常食を食べて気付いたのが、「おいしい非常食が少ない」ことだった。この問題を解決するためには自社で作るしかないと、異分野に踏み出す決断を下した。

市場調査で得た「非常食を備蓄していたものの、どこにあるか分からなくなった」「いざというときに期限が切れていた」といった声から、開発商品のコンセプトは「食べない備蓄食から、おいしく食べられる長期保存食」に決まった。普段でも食べて活用し、食べた分を買い足して補充していけば備蓄場所を忘れることなく期限切れも防げる、「ローリングストック」の発想だ。災害時以外の「いざ」というときにも役に立ちたいという思いから、商品のシリーズ名は「IZAMESHI」とした。

初めての食品の開発で、試行錯誤の連続

杉田エースにとって長期保存食は畑違いとはいえ、これまでの事業と全くの無縁というわけではなかった。震災時に被災地へ寄付をしたブルーシートや土のう袋など、被災者支援や防災という点でつながりはあったのだ。ただ、食品を自社開発するのは初めて。事業としての勝算はあったのだろうか。

「震災当時、商社として仕入れた非常食をホームセンターに納めていたが、ご飯、水、乾パンなどがメインで、お腹を満たすだけの商品が多かったように思う。勝算というよりは、災害時でもご飯、おかず、水、デザートを1ブランドで提供し、日常と変わらない食事として満足してもらえたら、という思いがあった」(福満氏)。

商品開発チームはわずか数人。食品の知識がないなか、協力会社を探すところからスタートした。「業界のつてをたどる他、一軒一軒調べて電話をかけることもした。希望に合った工場を探すのに苦労しているのは、今も変わらない」と福満氏。

東日本大震災後に開発プロジェクトが始まり、実際に商品を発売したのは14年9月。納得いく商品になるまでは、かなりの試行錯誤があった。

「長期保存食となる『容器包装詰加圧加熱殺菌食品』の製造にあたり、鍋で試作したときとレトルト加工したときで、材料の形態や色、味の仕上がりが全く異なってしまう。野菜は使用できる種類が限られ、メニューが制限されてしまうため、商品数を増やすのに苦労した。さらに長期保存食は専用パッケージが必要。作りたい食品がある一方で、長期保存の専用パッケージを供給してくれる会社を探すのも大変だった」(加藤氏)。

食品メーカーやデザイン業者など、さまざまな企業や人の協力を得て、23種類の商品の開発に成功し、IZAMESHIシリーズがスタートした。

「ごろごろ野菜のビーフシチュー」では、具が全て溶けないように試行錯誤を繰り返した