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記録破り、673kmの巨大稲妻 東京~広島間に匹敵

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/9/16

ナショナルジオグラフィック日本版

ブラジル南部からウルグアイにかけての上空を覆う雷雲をコンピューターで復元した画像。画像に示されている稲妻の長さは約250kmで、今回新たに報告された巨大稲妻の約3分の1に過ぎない(IMAGE BY MICHAEL PETERSON, LOS ALAMOS NATIONAL LABORATORY)

仕事をしていたある夜のこと。米国ロスアラモス国立研究所のリモートセンシングの専門家であるマイケル・ピーターソン氏は、巨大なクモを発見した。クモのような形に広がる巨大な稲妻「スパイダー・ライトニング」が、コンピューターディスプレーの中に現れたのだ。このタイプの稲妻は、嵐の空をジグザグに切り裂きながら数百kmにわたって広がることがある。

「ただただ呆気にとられていました」と氏は振り返る。

ピーターソン氏が分析したところ、放電路の長さと持続時間の新記録となる2つの稲妻が明らかになった。長さの新記録は全長673kmで、これはブラジル上空を駆け抜けた稲妻だった。673kmと言うと、東京から広島までの距離にほぼ等しい。持続時間のほうは、米国中部の空を13.5秒にもわたって明るく照らした稲妻だった。

さらにもう1つ、米国南部の上空に約11万5000平方kmにわたって広がった稲妻もあった。日本の本州の広さの半分ほどだが、稲妻の広がりに関する公式記録は存在しないため、新記録かどうかはわからない。

人工衛星データから特定された最も広範囲に及んだ稲妻を示した地図。放電路は日本の本州の半分に相当する11万5000平方キロにわたって広がった。下の方の横線は個々の「パルス」のエネルギーと大きさの時間変化を示したもの(IMAGE BY MICHAEL PETERSON, LOS ALAMOS NATIONAL LABORATORY)

巨大稲妻の捕捉を可能にしたのは、米海洋大気局(NOAA)の最新の気象衛星GOES-16とGOES-17だ。ピーターソン氏はこれらの衛星が宇宙から地上に送ってくるデータを自動的に処理する新たなシステムを開発し、2019年8月10日付けの学術誌「Journal of Geophysical Research Atmospheres」に論文を発表した。

これまで記録を保持していた稲妻も「稲妻に関する従来のイメージを覆すもの」だったとピーターソン氏は言う。「けれども今回の巨大稲妻は、稲妻の規模の限界をさらに引き上げることになりました」

宇宙から稲妻を監視する目は、気象災害に関する私たちの知識を深めてくれるだけでない。嵐の発達から気候変動まで、気象の長期的なパターンを研究者が把握するのにも役立つ。

「稲妻の科学は比較的新しい分野で、現在は稲妻を検出する新たな装置の開発を急いでいるところです」と、NOAA国立暴風雨研究所の科学者クリスティン・カルフーン氏は語った。GOES衛星がもたらすデータは「これまでは不可能だったやり方で稲妻を研究する機会を与えてくれる」という。

■巨大な稲妻が発生するしくみ

稲妻というと上から下に走るものを思い浮かべるかもしれないが、今回の研究で捉えられたスパイダー・ライトニングは横方向に走るタイプの稲妻だ。

スパイダー・ライトニングは、巨大で複雑な嵐の雲の底を這うように走ることが多い。大気中の暖かく湿った空気と冷たく乾いた空気が衝突して、大気の状態が不安定になるところでたいてい発生する。

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