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記録破り、673kmの巨大稲妻 東京~広島間に匹敵

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ナショナルジオグラフィック日本版

仕事をしていたある夜のこと。米国ロスアラモス国立研究所のリモートセンシングの専門家であるマイケル・ピーターソン氏は、巨大なクモを発見した。クモのような形に広がる巨大な稲妻「スパイダー・ライトニング」が、コンピューターディスプレーの中に現れたのだ。このタイプの稲妻は、嵐の空をジグザグに切り裂きながら数百kmにわたって広がることがある。

「ただただ呆気にとられていました」と氏は振り返る。

ピーターソン氏が分析したところ、放電路の長さと持続時間の新記録となる2つの稲妻が明らかになった。長さの新記録は全長673kmで、これはブラジル上空を駆け抜けた稲妻だった。673kmと言うと、東京から広島までの距離にほぼ等しい。持続時間のほうは、米国中部の空を13.5秒にもわたって明るく照らした稲妻だった。

さらにもう1つ、米国南部の上空に約11万5000平方kmにわたって広がった稲妻もあった。日本の本州の広さの半分ほどだが、稲妻の広がりに関する公式記録は存在しないため、新記録かどうかはわからない。

巨大稲妻の捕捉を可能にしたのは、米海洋大気局(NOAA)の最新の気象衛星GOES-16とGOES-17だ。ピーターソン氏はこれらの衛星が宇宙から地上に送ってくるデータを自動的に処理する新たなシステムを開発し、2019年8月10日付けの学術誌「Journal of Geophysical Research Atmospheres」に論文を発表した。

これまで記録を保持していた稲妻も「稲妻に関する従来のイメージを覆すもの」だったとピーターソン氏は言う。「けれども今回の巨大稲妻は、稲妻の規模の限界をさらに引き上げることになりました」

宇宙から稲妻を監視する目は、気象災害に関する私たちの知識を深めてくれるだけでない。嵐の発達から気候変動まで、気象の長期的なパターンを研究者が把握するのにも役立つ。

「稲妻の科学は比較的新しい分野で、現在は稲妻を検出する新たな装置の開発を急いでいるところです」と、NOAA国立暴風雨研究所の科学者クリスティン・カルフーン氏は語った。GOES衛星がもたらすデータは「これまでは不可能だったやり方で稲妻を研究する機会を与えてくれる」という。

巨大な稲妻が発生するしくみ

稲妻というと上から下に走るものを思い浮かべるかもしれないが、今回の研究で捉えられたスパイダー・ライトニングは横方向に走るタイプの稲妻だ。

スパイダー・ライトニングは、巨大で複雑な嵐の雲の底を這うように走ることが多い。大気中の暖かく湿った空気と冷たく乾いた空気が衝突して、大気の状態が不安定になるところでたいてい発生する。

そのしくみはこうだ。冷たく乾いた空気とぶつかると、暖かく湿った空気は持ち上げられて上昇気流となる。すると、気温が急激に下がって水滴や氷晶ができ、雲の中でこうした粒子が押し合いへし合いしているうちに、正と負の電荷をもつ粒子が現れる。やがて雲は正または負の電荷を帯びた部分に分かれ、雷が発生する準備が整う。

上昇気流の中ではたくさんの氷晶が頻繁に衝突しているため、短時間で電気が蓄積し、主として上下方向の放電が起こる。その一方で、この不安定な場所から離れた、より安定した層状の広い領域では、電気がゆっくりとたまってゆく。これがついに放電を起こすと、途方もない規模になるというわけだ。

今回の研究で記録された稲妻の1つを例に「テキサス州東部からはるばるアーカンソー州南部まで、たった10秒で走り抜けて放電するような電気の状態です」とカルフーン氏は説明した。

データが膨大すぎる

今回の分析のため、ピーターソン氏はGOES-16とGOES-17衛星が2018年に収集した北南米大陸の稲妻のデータを利用した。どちらも静止衛星で、雷などの発光現象を検知できるGLM(Geostationary Lightning Mapper)という観測装置が搭載されている。簡単に言えば、非常に狭い範囲の周波数の光子を1秒間に550回撮影できる超高性能ビデオカメラだ。

両衛星は、オーストラリア東部からアフリカ西海岸まで、地球の半分近い範囲を常に監視し、膨大な量のデータを提供している。2018年だけで、このシステムは北南米大陸で3億6000万回の稲妻を検出し、地上にデータを送信した。データは地上でリアルタイムで解析されている。だが、そのシステムは完璧ではない。

「最大の利点は最大の課題でもあります」とピーターソン氏は言う。「データの量が非常に多いのです」

稲妻のデータをリアルタイムに処理していると、稲妻が複雑すぎてシステムの処理能力が追いつかなくなることがある。その場合、稲妻が自動で細かく切り分けられ、劣ったデータとして分類されるため、多くの研究者はそれらを除いて分析を行う。

2018年の稲妻のデータのうち約4%がこのように扱われていた。具体的には1440万回で、ピーターソン氏の言葉を借りれば「一世代前の衛星が生涯に記録した稲妻の数と同じ」だ。

ピーターソン氏の自動化された手法では、その光のジグソーパズルを組み合わせて稲妻の形を復元する。こうしてできあがったのが、クモの脚のように枝分かれした稲妻だ。

氏が発見した記録破りの稲妻は、国連の世界気象機関(WMO)にまだ認定されていないものの、どちらも従来の世界記録の2倍ほど。現時点の稲妻の長さの記録は2007年にオクラホマ州で記録された321kmで、持続時間の記録は2012年にフランス南部で記録された7.74秒だった。

地上ではおそらく雷雨が収まっていた

「これまでのデータの取り扱い方では十分に表現できていなかったものを引き出していて、強い印象を受けました」と、国立暴風雨研究所の物理科学者エドワード・マンセル氏は語る。

カルフーン氏もこれに同意し、雷の活動の凄まじさをよく示すものだと評価するが、稲妻が1つのものか複数の稲妻が連続的に生じたものかを判別するのは非常に難しいと釘をさす。稲妻が大気中を走るとき、放電によりその空間の電場が変化し、第二の稲妻が生じることがあるからだ。

「GLMのような光センサーのデータだけを見ていても、そうした現象は判別できないでしょう」

過去の記録を打ち立てた稲妻は、地上のシステムで発見されていた。そうしたシステムでは空の特定の区画の稲妻を監視し、高解像度の三次元地図を作っている。けれども地上のシステムは、衛星に比べてカバーする範囲が狭いとピーターソン氏は言う。稲妻の構造や物理学を調べるには、両方の手法を組み合わせるのが一番だろう。

今回の研究は、人工衛星の膨大なデータを十分に活用する可能性を見せてくれただけでなく、稲妻の安全性について重大な問題を投げかけている。

ピーターソン氏によると、これらのモンスター級の稲妻は、地上では雷雨が収まったように見えてから発生したという。おそらく雨も落雷も止まっていたのに、突然、上空に巨大な光のクモが現れ、ものの数秒で州境を越えて走り去っていったのだ。

カルフーン氏は、雷雲が非常に気まぐれであることを理解することが大切だと言う。「雷がやんだように見えても、あなたの頭上で激しく活動している可能性があるのです」

(文 Maya Wei-Haas、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年8月27日付]

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