炒飯・丼… 冷食は「がっつり飯」激戦 19年下半期
食品ブレイク予測 2019年下半期 冷凍食品編
時代は低糖質疲れ? 2019年下半期に各社が力を入れるのは、男性を狙った「大容量ガッツリ系」だ。オフィスでそのまま食べられる冷凍米飯が新たなトレンドになりそう。日本アクセス秋季フードコンベンション2019「バイヤーズグランプリ」で上位にランキングされた、冷凍食品の中からバイヤーと日経トレンディ編集部の注目商品を紹介する。
がっつり&簡便の冷凍米飯
「最も注視している市場。今後も取り扱いを増やしていく」(イトーヨーカドーのバイヤー)。国内食品業界で数少ない成長分野が、年率数パーセント増と堅調に推移する冷凍食品市場だ。
なかでも近年、伸長するのが冷凍米飯。15年に発売された「ザ・チャーハン」(味の素冷凍食品)、18年にセブン─イレブン・ジャパンが発売した縦型カップ入りの「セブンプレミアム 炒め油香るチャーハン」「同 バター香る海老ピラフ」などのヒット商品が牽引している。特に後者は皿に移さず食べられる簡便性が受け、オフィスでのニーズや単身男性を中心に急伸した。
ただセブンの商品は170gで、これ1品でおなかを満たすには、男性にはやや物足りない容量。一方のザ・チャーハンは600gの大容量で食べ切りサイズではなく、「個食」には不向き。そこで19年下半期に大手が力を入れるのが、男性が1品で満足できるボリュームがあり、なおかつ容器付きで皿要らずの「がっつり&簡便」の冷凍米飯食品だ。
マルハニチロが8月に販売開始した「WILDishシリーズ」は、1食250~270gと男性に適量の食べ切りサイズ。パッケージの袋が自立し、レンジで温めた後、はさみで上部を切ればそのまま容器になる点が新しい。
「若い世代は、コンビニのパウチ総菜を皿に移さず、袋のままスプーンなどで食べることに抵抗感が無い人が多い。袋を容器代わりにしても受け入れられると踏んだ」(マルハニチロ商品企画課・徳善好美氏)。袋のため、捨てるときもかさばらない。冷凍チャーハンはニチレイ、味の素が強いが、「自社工場で高火力であおっていためる製法で作り、味も負けない自信がある」(同氏)と、シェアを伸ばせるかにも注目だ。
長年冷凍のグラタンやドリアを販売してきた明治も、冷凍米飯に本格参入する。投入するのは、単身男性狙いで内容量360~390gとボリューム満点の「満足丼シリーズ」だ。米飯自体を味付け調理して濃いめにし、ドリアなどで培ってきた技術を応用したソースをたっぷりかけることで、「ダブルの濃厚さ」を訴求。「これ1品で単身男性の夕食になり得る量と味を意識した」(明治食品マーケティング部・飯島良太氏)。食品の潮流は健康・ダイエット軸が長期化し、ここにきて飽きも見られる。「低糖質疲れ」も目立ち、反動でがっつり系が売れる公算は十分にある。
大人向けの弁当食材や朝食も
新領域を開拓する動きも顕著だ。従来、冷凍ギョーザなど点心が主だった中華の総菜に、本格料理の「レンジでつくる 黒酢の酢豚」「同 麻婆豆腐」(日本水産)が登場。
上トレーの凍ったソースを下トレーの肉や野菜の具材に載せてレンチンする2段の設計で、調理後も野菜のシャキシャキ感が残る。賞味期限は1年で、単身者や共働き世帯のストック中華総菜に最適だ。
かつては冷食の主戦場といわれた弁当おかずだが、少子化の影響で苦戦が続く。一方、近年は自分や配偶者に作る「大人の弁当」が増加し、実は冷食弁当おかずの7割を大人需要が占めるという調査結果もある。そうした大人向けとして登場するのが「おかず三昧 さば塩焼」(トロナジャパン)。最近サバの人気が高く、焼き魚の冷食が現状では少ないことに目を付けた。弁当箱に詰めやすい小ぶりのサバが3切れ入る。
各社が手付かずの「朝食」に特化した冷食が、「よくばりプレート モーニング」(日本製粉)。主食と主菜がワンプレートに載り、セットメニューがレンチンでできる。皿の準備や後片付けも不要で、忙しい朝の時短化に有効だ。
大手食品卸の日本アクセスが19年7月に開催した、東西会場で延べ1150社出展の大型展示商談会「フードコンベンション」の特別企画。Mart読者会員が選ぶ「Mart新商品グランプリ」の「プロ版」で、エントリーした77の新商品に、スーパーやコンビニなど流通各社の食品バイヤーが投票。加工食品、冷蔵食品、冷凍食品、アイスの4部門で得票数が多い順にランキングした。日本アクセス、流通専門誌「DIAMOND Chain Store」とのコラボ企画。
(文 高橋学、写真 中本浩平)
[日経トレンディ2019年10月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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