「学ぶ文化」なき会社に未来なし 松塾に込めた思いカルビー元会長 松本晃氏

伝えたかったのは学ぶ楽しさ

松塾の目的は人材育成ではありません。繰り返しますが、カルビーに「学ぶ文化」をつくりたかった。人間は学びから始まるんです。学ぶのが、いかに楽しいか。それを知ってほしかった。文化というのは、測れるものでも即効性があるものでもない。でも長い目で見れば、会社にも効果をもたらすんじゃないでしょうか。だから、学ぶ文化をつくりましょうということです。

僕にとっても、いろんな人と触れ合うことができて楽しい経験でした。会社は、ともすると「上の方だけ集まって何かやっている」となりがちです。そんなの何も面白くないですよ。だから僕は、どの会社でも上の人とはあまり付き合わず、みんなと付き合うようにしていました。カルビーでも現場にいって、おばちゃんと一緒にスーパーを回るのが一番楽しかった。

僕は、社員によく「本を読め」と言っていました。とにかくたくさん読めと。最近はみんなスマートフォン(スマホ)しか見ない。スマホの情報なんてろくなものありません。

僕なりの本の読み方も教えました。まず「本は借りるのではなく、たくさん買いなさい。そして最初の30ページは必ず読む。それで面白くなかったら捨てる」。で、それより大事なのが「面白くて全部読んだとしても、やっぱり捨てる」です。とっておいてはいけない。とっておくのが前提だと真剣に読まない。それじゃ頭に残らないんです。

みなさん、本を買って適当に読む。あとは家に飾っておく。ほとんどの本は二度と読みませんよね。だったら捨ててもいいでしょう? もし読み返したくなったら、もう一回買えばいいじゃないですか。本は安いと思いますよ。1冊せいぜい1500円ぐらい。10冊買ったって1万5000円ですよ。「こんなに安い投資をなぜしないのか。投資しなければ何も返ってきませんよ」という話を松塾でもよくしましたね。

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松本晃
1947年京都府生まれ。京都大学大学院修了後、伊藤忠商事入社。93年にジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)日本法人に転じて社長などを歴任した。2009年にカルビーの会長兼最高経営責任者(CEO)に就任。停滞感のあった同社を成長企業に変え、経営手腕が注目されるようになった。11年には東証1部上場を果たし、同社を名実ともに同族経営会社から脱皮させた。18年に新興企業のRIZAPグループに転じ、1年間構造改革を進めたのも話題に。

(ライター 猪瀬聖)

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