大分県別府市にある立命館アジア太平洋大学(APU)学長の出口治明氏(71)。日本生命のサラリーマンだったが、還暦の60歳になる手前でライフネット生命を創業、続いて70歳の古希を迎えた2018年に同大学学長に就任した。大企業の社員から起業家、教育者と3つ目のキャリアに挑む出口氏、「人生100年時代」の生き方をたずねた。
「1年365日のうち363日ぐらいは働いているかな。土日や祝日も様々なイベントに招かれたりするので想像以上に忙しい。地方の大学だし、本も読めると思って引き受けた面もあったが、のんびり温泉に入っている暇もない」。出口氏はこう話す。無類の読書好きのため、1日2~3時間は図書館で過ごせると思っていたが、学長就任から1年半の間に図書館で読書をしたのは合計で10~15分程度だという。朝8時半に大学に来て、18時までの間に面談などの予定が15件も入る日もある。超過密スケジュールだが、それは本人の意向もあるようだ。
学長室は出入り自由、学生と対話
学長に就任した出口氏は、まず大事なのは学生との対話と考え、「学長室には気楽に相談に来てもいいよ」と出入り自由にした。APUの学生数は5800人あまりだが、その半数は外国籍だ。韓国、インドネシア、ベトナム、中国、タイなどアジア中心に約90カ国の学生が集うダイバーシティな空間。多様な価値観を持つ積極的な学生が多く、人生の悩みから、進学、留学そして起業の相談まで実に150~200組の学生が訪ねてきた。サラリーマンからベンチャー企業を起こした出口氏には起業やNPO法人などの相談が次々舞い込む。
APUは18年7月に起業部を設立、学内の先生7人も賛同し、メンター役になった。1期生として32組46人の学生が参画、こちらもほぼ半数が外国籍だ。バングラデシュの牛の皮に着目した環境ベンチャーなど1年で4社が起業した。