家族全員ひとり1台ずつ 僕らがテスラを選ぶ理由

小沢 中国の大都市は渋滞がすごすぎて、自動車の総量規制が行われてますからね。

ジェームス 面白いのは北京とLAは地形が似てるということ。中国は今、40年前のLAと同じ状態なんだよ。その気になれば大気汚染も解決できるはず。

蛾が白から黒に進化したように自動車もEVへと

ジェームス 進化と言えば、面白い話があるんだ。ロンドンには固有種の白い蛾(ガ)が生息してたんだけど、産業革命が始まり、石炭を盛大に燃やし始めたら、ロンドン中が黒いすすで覆われた。すると白い蛾が目立ち過ぎて鳥などの天敵に食べられてしまった。そうしたら灰色や黒色の蛾が出現し始めたんだって。つまり捕食から逃れるためのカムフラージュ、要するに進化だよ(笑)。

小沢 へぇ、ロンドンの蛾が白から黒に変わった?

ジェームス EVについて言うと20世紀初頭に、ニューヨークのタイムズスクエアで撮影された興味深い写真がある。(パソコンのディスプレーに2枚の写真を表示して)上の写真は馬車やバギーがひしめき合っているけど、虫眼鏡でよーく見ると、車は1台しかないでしょ。

小沢 なるほど。

ジェームス ところが1913年、同じ場所を撮った写真には車がひしめき合ってる。たった10年であまりの劇的変化。だから今後10年とはいかないまでも、20年後にタイムズスクエアはEVでひしめき合ってるんじゃないかと。

スーザン それに私はEVに乗っている父の写真を持ってるのよ、1928年の。あの頃すでに作っていたのよ電気自動車を。

小沢 そもそもEVが身近なんですね、LAでは。

ジェームス 鍵はバッテリー性能だね。僕のロードスターが発売されたときに比べて、パナソニック製リチウムイオン電池の1セルあたりの性能はほぼ倍になっている。

小沢 でもその一方で、米国では「ガソリンバカ食い」のフォードのピックアップトラックFシリーズがバカ売れしていると聞きましたが?

ジム 今、米国で最も売れている車だよ。ユーザーの50%は仕事などでピックアップが必要な人たち。残りの50%は見えだろうね。私も持ってるし(笑)。

小沢 現代のアメリカの人にとって、ピックアップトラックは馬車みたいなものということですか。

ジェームス 物を運ぶのに必要だし、それ以上に米国人は「これをするのに1回だけ必要になるかも」「そのうち使うかも」でクルマを買っちゃう人種なんだ(笑)。本当だよ。

スーザン&ジム キャンパーとか、トレーラーとかね。

小沢 クルマ購入に対する障壁が低く、思いつきで買えちゃうんですね。ろくに使いそうもないクルマでも2台目、3台目で。

ジェームス 国土が広いから、根本的にクルマが必要だし、日本のような島国とはそもそも感覚も違うし、需要も違うんだ。

小沢 日本はクルマを所有するだけでハードルが高いですから。特に東京は。

ジェームス マンハッタンと同じだね。あそこに住んでる人はピックアップトラックを持っていないし。

小沢 ってことは今後も米国はEVとピックアップが共存する?

ジェームス そこは大統領次第だろうね(笑)。

ジム・ダウ(左、76歳)。世界的に有名なカリフォルニアのアートセンター・カレッジ・オブ・デザインでトランスポーテーション・デザインを学んだ後、映画会社パラマウント・ピクチャーズのアートディレクターとして活躍。S・スピルバーグの映画「激突!」で大道具、小道具なども担当。スーザン・ダウ(右)、ジェームソン・ダウ(中、35歳)
小沢コージ
自動車からスクーターから時計まで斬るバラエティー自動車ジャーナリスト。連載は日経トレンディネット「ビューティフルカー」のほか、「ベストカー」「時計Begin」「MonoMax」「夕刊フジ」「週刊プレイボーイ」、不定期で「carview!」「VividCar」などに寄稿。著書に「クルマ界のすごい12人」(新潮新書)「車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本」(宝島社)など。愛車はロールス・ロイス・コーニッシュクーペ、シティ・カブリオレなど。

(編集協力 北川雅恵)

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