石そっくりのプラスチックが遍在 新たな汚染問題に

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/9/13

ターナー氏は、こうした化学物質が検出されたのは、プラスチック製造で使われたクロム酸鉛の名残だと考えている。数十年前、クロム酸鉛は鮮やかな黄色や赤いプラスチックを作るために使われた。今、灰色になっているのは、燃やされることによって退色したため(ターナー氏)だ。研究チームは、鮮やかな色のプラスチックを燃やして溶かす実験を行い、プラスチックが実際に暗い灰色に変わることを確認している。

パイロプラスチックが、角がなく表面がすべすべとしている点や、外観が風化したような点も、長い間、浜辺で風雨にさらされていたことで説明がつく。

「地質学的には、通常の石になるまでには、数百年、数千年という時間が必要と考えられています。同じことがプラスチックに起こっているということです。しかし、時間軸では石よりもずっと速い速度で廃棄プラスチックの『石』化が進んでいるのです」と、ターナー氏。

パイロプラスチックの漂流経路は?

英コーンウォールのパイロプラスチックが具体的にどこから来たものかは謎だ。ターナー氏は、古いゴミの埋立地からキャンプファイヤーまで多くの発生源があると考えている(ハワイで見つかった、プラスチックと岩が混ざり合ってできたプラスティグロメレートと呼ばれる物質はキャンプファイヤーが原因と見られている)。焼却したゴミの海への投棄が疑われるチャネル諸島のサーク島から英仏海峡を越え漂流してきたり、はるか遠くカリブ海から流れ着いたりしたのかもしれない。

いずれにしても、パイロプラスチックは世界各地に存在すると見られ、ターナー氏はパイロプラスチックが環境にどんな影響を与えるかを調べている。同氏が集めたサンプルの中には、生物が残したと見られる痕跡もあった。その部分は鉛を多く含んでいたことから、動物はプラスチックを摂取できること、その動物を通じ重金属が食物連鎖に取り込まれていることが示唆されている。

ターナー氏は米国の研究者とも協力し、サンプルに有毒な有機化合物が含まれていないかどうかのさらなる分析を進めている。

「管理されていない環境下でプラスチックを燃やせば、多種多様な有毒物質が発生します」と、ターナー氏は言う。

パイロプラスチックは、生態系への直接的な影響を与える物質であると同時に、環境中にプラスチックが遍在することを改めて示している。英レスター大学で古生物学を教えるジャン・ザラシーウィックツ氏は、パイロプラスチックが岩石の一種として登録される日が来るかもしれない、と話す。

現時点では、パイロプラスチックが岩石として記録されるかは不明だ。しかし、パイロプラスチックが「地質学的なサイクルの一部になりつつあることは明らかです」と、ザラシーウィックツ氏は言う。

「もう見た目は、石そっくりになっていますから」

(文 MADELEINE STONE、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年8月22日付]

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