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オペラ歌手飛び立て 池田理代子さんが貯金ゼロの理由

編集委員 小林明

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NIKKEI STYLE

「ベルサイユのばら」「オルフェウスの窓」などのヒット作を生み出した人気漫画家でオペラ歌手としても活躍する池田理代子さん(71)は一昨年11月に拠点を東京から熱海に移し、漫画の執筆、歌のレッスン、オペラ制作などに取り組んでいる。「お金を持ってあの世には行けないし、ぜいたくをして暮らすつもりもない」と私財をオペラを上演する費用に注ぎ込み、若い才能の育成に精を出す。そんな池田さんに幼年期からの生い立ちや漫画家を目指した経緯、声楽家への転身、オペラ制作などについて前半・後半の2回に分けて振り返ってもらった。

退職金で熱海に移住、海沿いのマンション生活

――なぜ拠点を東京から熱海に移したんですか。

「東京・原宿に借りていた自宅兼アトリエのマンションの家賃が大幅に値上がりすることになったためです。引っ越しを検討したんですが、驚いたことに都内で私くらいの年齢の独身女性に新たに部屋を貸してくれるマンションはあまりないですよ。以前から熱海のマンションには別荘のような感覚で小さな部屋を持っていて、ちょうどその同じマンションに3LDKの空き物件が売りに出ていたので、思い切ってそれを購入し、原宿のマンションは引き払うことにしました。海沿いで窓から初島が見える気持ちが良い場所です。熱海にはケア付きマンションなどもあるようですが、自分がそれを買うにはまだ早いですからね」

若手支援のためオペラ上演、チケット完売でも赤字

――「ベルサイユのばら」「オルフェウスの窓」など漫画のヒット作が多いので印税だけでも悠々自適な生活でしょうね。

「いえいえ、そうでもありません。実は、若手漫画家の頃に設立した自分の事務所に著作権の管理を任せており、私自身は20歳代からずっと給料制なんです。熱海のマンションは事務所の退職金などを使って買いました。私個人はぜいたくな生活には興味がありません。最低限、食べて行くだけで十分だと思っていますから」

「私は若い歌手を支援するためにオペラを上演してきました。オペラの上演にはとてもお金がかかるんです。企業の協賛もなかなかつかないので、せっかくチケットが完売してもどうしても赤字が出てしまう。だから貯金はオペラを上演する費用に使ってしまって、ほとんど残っていません。でも若い才能のために役に立ったとすれば、それはそれでなかなか良いお金の使い方だったなと思っています」

第二の人生、漫画家から声楽家へ転身した理由

――1995年、47歳で声楽家を目指して東京音楽大学に入学した時は「第二の人生への挑戦」として大きな話題になりましたね。

「40歳を過ぎた頃、更年期障害に悩まされるようになり、自分に残された時間を強く意識するようになったのがきっかけです。音楽は漫画家になる前からやりたかったけど、ずっと諦めていました。でも改めて声楽の先生に相談すると、『楽器ならもう遅いけど、歌ならばまだ間に合う』と言われたんです。声帯だけはきちんと鍛えていれば、死ぬまで衰えないらしい。だから音大で声楽を学んでオペラのソプラノ歌手を目指すことにしました」

「でも少なくとも音大に在学する4年間は漫画を描けなくなります。アシスタントを抱えていたし、生活できなくなるんじゃないかと思い、随分と悩みました。当時、事務所の社長だった妹に相談すると、『会社経営は何とかやっていけるし、給料も出せるから、ぜひ挑戦してみたら』と私の背中を押してくれたんです。そのおかげで音大を受験する決心がつきました。世界的なプリマドンナ、東敦子先生の門下生として指導を受けますが、東先生から『そんな体では歌えませんよ。まずは太りなさい』と言われたので、寝る前に食事するなど涙ぐましい努力をしながら、2年間で体重を45キロから60キロまで増やしました」

東先生の遺言、「1回の本番」「若い才能は支援で伸びる」

――声楽家に転身して得たものは何ですか。

「音大の授業では若い学生に交じってレッスンを受けます。私と違って若い生徒は上達するのが速いので、嫌でも年齢の差を感じざるを得ません。でも1年生の時から、オーケストラをバックに大ホールの舞台に立つ機会に恵まれたのはとても幸運だったと思います」

「東先生から言われた2つの言葉が今も心に残っています。1つは『1回の本番は数百回分のレッスンに匹敵する』ということ。もう1つは『若い才能はある時期に経済的支援を受けると飛躍的に伸びることがある』ということ。私が4年生の時に先生はがんが再発。卒業した年の99年に亡くなってしまわれたので、その言葉が遺言のように私の心に響きました。『若い才能のために私にそれをしなさい』と東先生から言われたような気がしたんです」

――その言葉を今も実践しているわけですね。

「そうです。クラシック音楽の中でも特にオペラ歌手は生活するのが大変なんです。若い人は大きな役につけるまで、みんなアルバイトをしながら頑張って食いつないでいます。ミュージカルはまだいいんですよ。1カ月も続く公演なんてありますから。でもオペラの公演はせいぜい1日か2日くらい。マイクを使わないので長期間公演するのはかなり難しい。たとえば、稽古期間が同じように3カ月でも、公演期間が圧倒的に短いから若いオペラ歌手はなかなか食べていけない。なるべく早い時期に舞台に立ち、歌うという経験が必要なのに、いつまでたっても機会が巡ってこない。だから、若い人に舞台に立つ機会を提供し、隠れた才能を発揮してもらいたいと思ったんです」

映画「わが命つきるとも」、人間は命をかけて思想信条を貫く

 「実はもう1つ、私の生き方を決めた映画があります。アカデミー賞6部門(作品賞、監督賞、主演男優賞など)を獲得した『わが命つきるとも』(1967年公開)。16世紀の英国を舞台に国王ヘンリー8世の離婚問題を巡り、離婚を禁ずるカトリックの立場から国王と対決し、処刑されたトマス・モアの生涯を描いた素晴らしい名作です。この映画を通じて『人間は自らの思想信条のために命をかける動物なんだ』と初めて教えられました。今まで個人的に命をかけるような場面に出くわしたことはないけれど、『そういう生き方をしたい』と私に決心させるほど大きな影響を受けました」

――自分はどんな人間だと自己分析していますか。

「『今まで好き勝手に生きさせてもらったな』という気がします。親に様々な心配をかけてきたし、ドイツに留学したり、声楽家になるために音大に入ったり……。いつも私を支えてくれた妹には心から感謝しています。事務所の経営が苦しい時、妹は自腹を切ってやりくりしてくれたようです。自分でもやりたいことが色々とあっただろうに……。感謝してもしたりないくらいです。現在、新たなオペラの制作に取り組んでいます。ずっと作り続けてきた短歌も作品集としてまとめる準備をしています。今後も残された時間を様々な形で才能を持った若手のために尽くしたいですね」

(聞き手は日本経済新聞 編集委員 小林明)

※次回の後半は幼少時代の思い出、学生運動やアルバイトに明け暮れた大学時代、漫画家を目指した経緯、「ベルサイユのばら」の誕生秘話などについて回想します。

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