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有森裕子 パラスポーツで支え合いが当たり前になる日

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日経Gooday(グッデイ)

早いもので2020年東京オリンピックまであと1年を切りました。既に競泳などでは、オリンピックの切符を手に入れた選手もいます。そして9月15日には、いよいよマラソン代表の座をかけたレースであるMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)が開催されます。

私もNHK総合テレビで女子のレースを解説しますが、限られた人数で戦う選考レースがどんな展開になるのか、とても楽しみです。ぜひ皆さんも、夢の舞台への切符を全力でつかみにいく選手たちを応援してあげてください。MGCの感想は、また次回以降にお伝えできればと思っています。

さて、私事で恐縮ですが、今年6月21日に日本障がい者スポーツ協会(JPSA)の理事に任命されました。これまでも、2000年から視覚障がい者ランナーの伴走者として「かすみがうらマラソン兼国際盲人マラソン」に参加したり、2008年から「スペシャルオリンピックス日本」[注1]の理事長を務めたりしているので、それらの活動で得られた知見を生かせればと思っていますし、2020年の東京パラリンピックでもお役に立てればと考えています。

今回は、そうしたご縁を踏まえて、障がい者スポーツについて私が最近感じていることをお話ししたいと思います。

パラリンピックが終わったら、選手への支援はどうなる?

先日、あるブラインドマラソン[注2]の女子選手とお話をさせていただく機会がありました。実業団に所属する彼女は、世界大会で入賞するなど近年めきめきと実力を伸ばし、東京パラリンピック出場を目指して日々努力していらっしゃいます。

そんな彼女との対談はとても楽しかったのですが、対談をきっかけに1つ気になったことがありました。それは、2020年のオリンピックやパラリンピックが終わった後のアスリートの生き方です。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見越して、多くのアスリートを雇用し、サポートする企業がここ数年、目立っています。オリンピックやパラリンピックで活躍するためのトレーニング環境を提供してもらえることは非常にありがたいことですが、大会が終わった後に企業がアスリートたちへの支援や雇用を継続するかどうかは決まっていないことも多く、自分はどうなるのかと不安に思っている選手は少なくないだろうと想像しています。

[注1]スペシャルオリンピックスは、スポーツを通して知的障がいのある人たちの社会参画を支援する国際組織。オリンピック競技種目に準じたさまざまなスポーツトレーニングと競技会を提供しており、世界大会は夏季・冬季ともに4年に1度開催される。スペシャルオリンピックス日本は、スペシャルオリンピックスの国内活動を推進する国内本部組織。

[注2]視覚障がいのある選手が行うマラソン競技のこと。

実際に、東京オリンピック・パラリンピックが終われば、アスリートへのサポートを縮小する企業は少なくないでしょう。特に、障がい者スポーツは、その影響を大きく受ける可能性も否めません。東京パラリンピックでメダルを獲得しないと、自分の雇用や練習環境がなくなるかもしれないと不安に思っている障がい者アスリートは少なくないようにも思います。

しかし、残念ですが、パラリンピックでメダルを獲得するだけでは、企業スポーツのありようはあまり変わらないように思います。大事なのは、周りが変わってくれるはずだと期待することではなく、メダルを獲得した選手自身が変わることだと私は思うのです。

大事なのは自分が変わること

そんなふうに考えるのは、私自身が過去に似たような経験をしているからです。以前この連載でも振り返りましたが(「有森裕子 「幸せにならなきゃ」プロ目指し走り続けた」)、1992年のバルセロナオリンピックで銀メダルを獲得した後、私はマラソン選手としての自分の価値を周囲が高く評価してくれて、目標設定やトレーニングに関する意見も受け入れてもらえるだろうと信じていました。ところが現実はメダルを獲得する前と何も変わらず、思い通りにいかないことが続きました。

そのことが悔しくて、1996年のアトランタで銅メダルを獲得した時には、まずは自分が変わろうと思いました。そして、自分は「走ること」を生業にすると決め、自らの肖像権の管理など、「走ることで食べていく」ための権利をはっきり主張しました。おかげで年月は要したものの、女性アスリートで初のプロアスリートになることができました。これはメダルを獲得したことで周囲が変わったから実現したのではなく、自分を変えたからこそ、周囲を変えることができたのです。

パラリンピックでメダルを獲得し、「走ること」を生業にしたいと思う障がい者アスリートがいるならば、自分はこの先、走ることやスポーツで収入を得ようと考えていると意志を主張してほしいと思います。

これは、オリンピアン(健常者アスリート)であっても、パラリンピアン(障がい者アスリート)であっても同じです。一生のなかで競技者として活躍できる期間は限られています。その短い期間にチャンスをつかむには、相当な覚悟と努力が必要で、そのためにも、自分が将来どのように生きていきたいのかという明確なビジョンを持つことが大事なのです。

東京パラリンピックでメダルを獲得した後、パラリンピックメダリストとしての新しい道を切り開いていく障がい者アスリートが1人でも多く登場することを願っています。

「支えて当たり前、支えられて当たり前」の世の中に

障がい者はスポーツをする上でも、働く上でも、生きていく上でも、誰かの支えが必要です。でも、「障がい者だから」人の助けが必要なのではないと私は思っています。人間は、誰しも人の支えなしでは競技は続けられないし、働けないし、生きていけません。形は違っても、誰しも、支えを必要として生きていることに変わりはないのです。

支えてもらったことに対して、「ありがとう」という感謝の気持ちを持つことは大切です。世の中の関心と支援を集めるきっかけとして、「ハンディキャップを持つ人を支えることの重要性」を発信するのも大事でしょう。でも、社会や企業が、障がい者のために「支えてあげている感」をわざわざ醸し出したり、CSRに掲げて企業イメージを高めるようなアピールに使ったり、「支えてもらってありがとうございます」と障がい者の方に過剰に思わせ、言わせるような雰囲気を作るのは、違うのではないかと思うのです。

誤解を恐れずに言えば、「障がい者も健常者も、支えてもらって当たり前」という世の中になるべきではないでしょうか。

障がい者であろうが、健常者であろうが、人として支え合うのは当たり前だという認識が、2020年の東京パラリンピック以降の世の中に少しでも浸透すればいいなと思っています。そんな未来や社会の形につなげるための東京パラリンピックであってほしいし、私自身、そんなきっかけや流れを作れる当事者の1人でありたいです。

(まとめ:高島三幸=ライター)

有森裕子さん
元マラソンランナー。1966年岡山県生まれ。バルセロナ五輪(1992年)の女子マラソンで銀メダルを、アトランタ五輪(96年)でも銅メダルを獲得。2大会連続のメダル獲得という重圧や故障に打ち勝ち、レース後に残した「自分で自分をほめたい」という言葉は、その年の流行語大賞となった。市民マラソン「東京マラソン2007」でプロマラソンランナーを引退。2010年6月、国際オリンピック委員会(IOC)女性スポーツ賞を日本人として初めて受賞した。

[日経Gooday2019年8月14日付記事を再構成]

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