迫りくる超スマート社会と人材 成蹊大学【特別対談企画】大学×企業 2030年の社会と人材

「未来の変化に対応できるfuture proofな人材になる。それが大切です」 経営コンサルタント 海部 美知氏(右)

「変化が激しい時代には、絶えず新しいものを修得するマインドが重要になってくる」 成蹊大学 学長 北川 浩氏(左)

ITリテラシーによって支えられ、進化する「超スマート社会」。そのような社会に求められるのはどんな人材だろうか。今回、両氏に世界から見た日本について語っていただいた。

■IT化がなかなか進まない日本特有の課題とは

海部 Society5.0の世界では、自動運転の車が走り、つらい仕事はしなくて済むなど夢のような話が色々ありますが、シリコンバレーから来た人間からすると、それ以前の問題として日本人のIT能力はあまりにも低いと感じています。

北川 「超スマート社会」を実現するためには、日本全体のIT力を底上げすることが必要ということですね。

海部 作る人を育てる前に、まずIT を使いこなせる人を育てないと。特に企業の中でIT リテラシー力を高められていないと感じています。そんなに難しい話ではなく、普段からIT をどんどん使って慣れることが大切です。

北川 自転車に乗れるようになるのと同じ原理で、日常的にITを使うということですね。

海部 クラウドサービスを使いこなせるようになってはじめて企業のIT リテラシーが高まり、仕事の効率が良くなることで次の世界が見えてくるのですが、日本の企業は「コストがいくら削減されたか」という部分しか見ません。アメリカの企業は、もっと高度なサービスを顧客に提供することで、「競争相手に勝つ」という戦略的ニーズのもとにIT 化に取り組んでいます。

北川 確かに、日本ではどれだけ人やコストが減らせるかといった観点で考えています。

海部 ただ最近では、働き方改革のために業務を効率化する話がありますよね。良い話だと思います。また、最近になって日本の様々な場所でWi-Fi が使えるようになったり、いろんな国の言葉で案内表示がされるようになるなど、2020年に向けてグローバル化を推していこうという雰囲気は出ていると感じています。

北川 確かに東京周辺ではかなりのスピードで進んでいますね。

海部 「セルフ黒船効果」なのかもしれませんが、人の考え方は変わってきています。ただし、成り行きに任せないで何とか変えていこうと提唱する人が必要です。そのためには企業もIT人材をもっと有効に活用してもらえればと考えています。エンジニアの方たちに自分のアイデアをどんどん形にしてもらい、「こんなツールやサービスを使いたい」というオーダーに対してすぐに応えられる環境を作ってあげることが効果的ではないでしょうか。

海部 美知氏 経営コンサルタント
かいふ みち●本田技研工業、NTTアメリカなどを経て、コンサルティング会社 ENOTECH Consulting 代表を務める。著書に『パラダイス鎖国忘れられた大国・日本』(アスキー新書)、『ビッグデータの覇者たち』(講談社現代新書)、ブログに「Tech Mom from Silicon Valley」がある。シリコンバレー在住。

■不確実な未来社会で必要とされる人材とは

海部 10年先はどうなるか誰もわかりません。ならば、どうすればいいか。テクノロジーの世界に future proof という言葉がありまして、未来がどうなっても対応できる仕組みを事前に作っておくのです。今の状況に最適化した仕組みを作ってしまうと、数年後に誕生する新しい技術を取り入れられませんので、いつでも対応できる余裕のある仕組み設計が必要とされています。このような future proof の仕組みを人間そのものが持つことが一つです。

北川 IT 系のテクノロジーはものすごいスピードで変化や進歩しますからね。一生懸命勉強しても、4年後には役に立たなくなる可能性も高い。そうすると、また4年後には新しいチャレンジをして、新しいことを修得しなくてはなりません。だから絶えず、新しいものを身につけるマインドを持っていないといけませんね。

海部 もう一つは、世の中が変わったらどうすべきかを、自ら考えられる力を持った人材です。企業の方から「何か新しい事業を始めたい」とよく相談されるのですが、「何がやりたいのですか?」と聞くと、明確に答えられません。

北川 日本の教育では「自分はこう思います」と語れるようになるトレーニングがなかなかできていません。自分の頭で考えたことを、自分の言葉で語るのが基本なのですが。

海部 アメリカでは2歳ぐらいからプレスクールに通いますが、一週間に一度、好きなおもちゃを持ってきて、みんなの前で「私がこのおもちゃを好きな理由」をプレゼンテーションします。2歳の時から自らの言葉で語っているんです。日本ではどうでしょうか。戦後の日本は、まずは自動車、次は半導体、と絶対に鉄板だとわかっていることをずっと追いかけてきましたが、これから先の世の中はどうなるかわからない。だからこそ自分たちで考えなければならないのですが、何をすべきかという教育の仕組みがないのです。

北川 そう、出来上がりがわかっているものに向け正確に進める教育はよくあるけど、全く何にもないところから何かを作るトレーニングは、これまでほとんど聞いたことはありません。

海部 シリコンバレーに「リーンスタートアップ」という考え方があります。必要最低限のビジネスのアイデアを持ってきて、仮説を立てて検証していくのですが、この仮説を立てるのが難しい。

北川 確かにそのようなトレーニングを積んでいけば、世界に通用する人材になりますね。

北川 浩氏 成蹊大学 学長
きたがわ ひろし●一橋大学経済学部卒業。同大大学院経済学研究科博士後期課程単位取得満期退学後、成蹊大学経済学部専任講師に。キャリア支援センター所長や経済学部長などを歴任し、2016年から成蹊大学学長に就任。専門分野は貨幣論、金融論、人材開発論。

■「多様性」が学生のマインドと感性を育む

北川 何も無いところから仮説を立てて新しいことを創造したり、自分の頭で考えたことを自分の言葉で表現しようとする態度を養うためにはどうしたら良いか。そこで、成蹊大学では「丸の内ビジネス研修」(1) を実施しています。日本を代表する企業からの課題を文系理系の合同チームで4カ月ぐらいかけて考えてプレゼンするのですが、丸の内の会議室で企業の人たちを前に、アウェイな緊張感の中で一生懸命に自分の言葉で話す。その経験をすると、学生たちは大きく成長します。他にも東京育ちの学生を島根県に連れて行って、地元の人との町おこしプロジェクトを行っています (2) 。 通い慣れたキャンパスではない「多様性」の中でこそ感性が磨かれ、あるいは未知のものを吸収するマインドが生まれると考えています。

海部 おっしゃる通り、多様性が最適な回答かもしれないですね。そのような体験ができる機会をたくさん作るというのはとても素晴らしいですね。

北川 もう一つが最初に出たITスキルの底上げですね。今後、学部学科の新設を予定 (3) していますが、そこで学ぶ学生だけではなく、全ての学生が一定レベル以上のITスキルを身につけることで、人生を切り拓けると考えています。

海部 期待しています。若い人は新しいことや、世界に対応できる力が強いので、ぜひ世界に通用する、自分の頭で考える人材を育成してほしいと願っています。

(1) 丸の内ビジネス研修
学部横断型の産学連携人材育成プログラム。文系・理系の混成チームとなり、企業から与えられた課題に取り組む「丸の内研修」を経て、「インターンシップ実習」に参加。最終的に、企業関係者へ成果を発表する。異なる考え方や専門分野への相互理解を深め、協働して課題を発見、解決する力を身につける。


(2) 島根県立大学との連携
両大学の学生が多様な人々の価値観に触れ協働する場を設け、地域貢献について連携して活動している。

(3) 2学部3学科の新設
より複雑化・高度化する現代社会の諸問題の解決に取り組むことのできる高い専門能力を持った人材を育成することを目的として、2020年4月に経済学部 経済経営学科を改組。経済学部 経済数理学科、現代経済学科、経営学部 総合経営学科に再編・新設。
成蹊大学
東京都武蔵野市吉祥寺北町3-3-1
TEL:0422-37-3533
経済学部、経営学部、法学部、文学部、理工学部
5学部 12学科(2020年4月より)
https://www.seikei.ac.jp/university/s-net/

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