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星野源の『引っ越し大名!』 引きこもり侍を自然体で

日経エンタテインメント!

2019/9/4

星野源が6年ぶりの主演映画に選んだ『引っ越し大名!』。『超高速!参勤交代』のヒット以降、トレンド化している「ユニーク時代劇」の流れをくむ娯楽活劇は、どのようにして生み出されたのか。原作者や監督、プロデューサーに聞いた。

(C)2019映画「引っ越し大名!」製作委員会

江戸時代、書庫にこもって本ばかり読んでいた“引きこもり侍”の春之介が、「引っ越し奉行」に就任。移動距離600km、総勢1万人の「藩まるごと引っ越しプロジェクト」を超・低予算で実現するべく悪戦苦闘する……。

弱小藩が知恵と工夫で参勤交代を乗り切る姿を描いた『超高速!参勤交代』(2014年/興行収入15.5億円)や、貧乏町人が藩を相手に金を貸して利息を巻き上げる『殿、利息でござる!』(16年/興収13.7億円)など、松竹が企画・配給するユニークな時代劇(以下、ユニーク時代劇)が好調だ。その流れをくむ作品として期待を集めているのが、『引っ越し大名!』。原作・脚本は、『超高速!参勤交代』の原作者で脚本も手掛けた、作家・脚本家の土橋章宏氏だ。

「『超高速!参勤交代』の後に『次、何を書こう』とウィキペディアをさまよっていた時、目に飛び込んできたのが『引っ越し大名』という言葉でした。見ると、幕府に7回も国替え(引っ越し)をさせられた松平直矩のことで、7回は大変だっただろうなと(笑)。転勤の多いサラリーマンのように現代に通じる要素もあるので、面白い小説にできそうだと感じました」(土橋氏)

主人公は、かねてより興味を持っていた「引きこもり侍」に設定。「侍の家に生まれても、長男じゃない人は、くすぶって引きこもったりしていたらしい。そういう人が頑張って実力を発揮したら面白いんじゃないかと」(土橋氏)

こうして執筆した小説『引っ越し大名三千里』を、『超高速!参勤交代』で組んだ松竹の矢島孝プロデューサーに送ると、「タイトルが良く、藩ごと引っ越しするという発想も面白い」(矢島氏)と映画化が決定。監督は、『ジョゼと虎と魚たち』(03年)などで注目され、12年に野村萬斎主演の時代劇『のぼうの城』をヒットさせた犬童一心監督に。

「いつかご一緒したい監督の1人でした。ユニーク時代劇の流れの中に、新しい面を掘り起こしてもらえるんじゃないかという期待がありました」(矢島氏)

犬童監督は「また時代劇を撮ってみたかった」とこの依頼を快諾。3人で脚本の打ち合わせに入った。

■2時間以内の「映画版」に

犬童監督がまずこだわったのは、尺を2時間以内にすることだ。

「原作にはコメディタッチの部分があるので、尺は長くないほうが適切だろうと思いました。そこで意識したのは、キャラクターの成長の幅を2時間の中で大きく描くこと。例えば春之介が好きになる於蘭は、原作では一歩下がって言うことを聞いてくれるような控えめな女性です。でもそれよりは、子持ちの大人の女性を恋愛対象に選ぶほうが、春之介の“大人になった感”が強くなる」(犬童監督)

(C)2019映画「引っ越し大名!」製作委員会

こうして土橋に設定変更を提案。於蘭が馬に乗って春之介を助けに行くシーンや、武芸の達人・鷹村源右衛門の豪快な殺陣シーンも、犬童監督によるアイデアだ。

「於蘭の芯の強さやたくましさを、エピソードを作って説明すると何十分もかかる。でも馬に乗って駆けつければ、30秒の映像で表現できる(笑)。それに、そんなふうに画として記憶に残る場面がないと、映画はダメだと思ってるんです。鷹村の殺陣のシーンは、武芸の達人なのに実力を発揮できる場面がないと、演じる人がやる気が出ないまま現場に来るだろうなと思って(笑)」(犬童監督)

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