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日本社会のしくみを
歴史やデータから検証し
進むべき道を人々に問う

――終身雇用や新卒一括採用といった日本特有の慣習はどんな経緯で生まれ、弊害が指摘されながらもなぜ変わらないのか。最新刊『日本社会のしくみ』では、日本の雇用や教育、社会保障制度の成り立ちを様々な角度から検証し、日本社会を規定するしくみの本質に迫っています。執筆のきっかけは。

数年前から日本の戦後史の研究を進めています。政治、経済、外交、教育など様々な角度から日本社会の動きを世界と比較しながら調べていくと、ほとんどは世界の同時代的な潮流に沿ったものだったのですが、一部だけ他国と全く違う動きをしていることに気付きました。最初に気付いたのは、日本の社会保障制度の独自性です。

日本の健康保険や年金制度は、「カイシャ」と「ムラ」、つまり属している企業か、住んでいる地域をベースに組み立てられています。しかし、他国の社会保障制度は必ずしもそうなっていない。例えばドイツの健康保険は、職種を単位として始まっています。労働組合も、日本では企業単位ですが、欧州では職種別組合が発達しました。なぜ日本にはこのカイシャとムラを基盤とする独特の社会のしくみが生まれ、どのような経緯で定着したのかを明らかにしたいと思いました。

――日本社会の全体像を捉える足掛かりとして本書では、日本人の生き方を「大企業型」「地元型」「残余型」の3つのモデルに分けて考察しています。

大学を出て大企業で終身雇用の正社員として働く人を「大企業型」、地元の学校を出て、そのまま地域にとどまり、自営業や地元の産業で働く人を「地元型」、それ以外を「残余型」として、日本人の生き方がどう変わってきたのかを調べてみました。

例えば、「企業で正社員として終身雇用で働く」という「大企業型」は昭和の日本人の働き方の典型のように捉えられていますが、1950年代生まれでも3人に1人程度。政府の統計データなどから推計すると、現在では26%程度になっているとみられます。

一方、定住者とUターン者の数から現在の「地元型」の割合を推計してみると、36%程度です。この数字が過去からどう推移しているかの検証は難しいのですが、自営業者の減少や高卒労働市場の急激な縮小といった社会の変化とともに急速に減ってきていると推測できる。日本の社会保障制度はカイシャとムラを単位としていると言いましたが、現状はそこに依拠する「大企業型」や「地元型」の生き方をする人、とりわけ「地元型」が減っており、カイシャにもムラにも足場を持たない「残余型」が増えているのです。

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