ゲーム好き集いひたすら対戦 LANパーティーの熱気
競技としてゲームで対戦し、その技を競い合うeスポーツ。高額の賞金を稼ぐ選手の登場などが話題となり、最近は大手芸能事務所がプロゲーマーのマネジメントに乗り出したり、テレビで関連番組がスタートしたりと、日本でも注目度が高まってきた。一方、こうした本格志向の競技とは一線を画すイベントも徐々に広まりつつある。
5月10~12日の3日間、ベルサール高田馬場(東京・新宿)では「C4 LAN 2019 SPRING」というイベントが開催された。これはゲームが好きな人たちが自分のパソコンやゲーム機などを持ち寄り、仲間と時間を気にせずにひたすら遊ぶ「LANパーティー」というイベントだ。日頃はインターネットを介してゲームを楽しんでいる仲間と、同じ空間で遊べるのが人気となっている。
「C4 LAN」の大きな特徴は、2泊3日、オールナイトで運営されるという点。夜になると自宅やホテルに帰る人も多いが、会場で夜通し遊ぶ強者もいる。チケットは「3日間使える座席付き」「座席はないが3日使える入場券」「1日限定の入場券」に大きく分けられる。
総合プロデューサーの田原尚展氏によると、2016年10月の第1回で売れたのは120席程度。それが18年5月に会場を現在の会場に移したときは360席程度と3倍になり、トータルの入場者数も1200人を超えた。
もともと欧米発祥のイベントだが、日本国内でも少しずつ広がり始めている。今年3月には大分県eスポーツ連合が別府のイベント会場で「BEPPU ONSEN LAN」を開催し、用意した30席は2日で完売。同連合の西村滉兼氏によると「半数は県外からの参加だった」。
同じ3月には東海テレビ放送が「乱(LAN)byNeF」というLANパーティーを名古屋の栄で初めて開催。総合プロデューサーを務めた同社事業局の深谷弘氏は「イベントとしてさらに大きくなる可能性を秘めているし、ブランディング次第ではテレビコンテンツにもなり得る」と見る。C4 LANの会場は外部から見ることはできないが、乱byNeFはより多くの人に関心を持ってもらえるよう、チケットがない人も外から見られるようにした。
こうしたLANパーティーには、eスポーツが根付くための土台としての役割を期待する声も多い。C4 LANではすでにゲーミングコンピューターのメーカーや販売店などがスポンサーとなっているが、LANパーティーに関心を示す企業にはeスポーツの連動を期待する声もあった。実際に欧米ではeスポーツと連携することで、参加者が1万人を超えるイベントもある。
実際に会場を歩いて実感するのは、そのアットホームな雰囲気だ。会場で初めて会った人同士が親しげにディスプレーをのぞき込んだりする様子に、雰囲気的にはまだ規模が小さかった頃のコミックマーケットに近いような印象も受けた。
C4 LANを開催する前には海外のLANパーティーに参加していたという田原氏によると「本場の欧米は"ゲームは競うもの"という意識が強い。LANパーティーのイベントでも"大会"がコンテンツの中心となっているのも多く、殺伐とした雰囲気になることもある。一方、日本では参加者が様々なゲームを自由に楽しんでいる」そうだ。
規模はまだ小さいが独自の展開を見せつつある日本のLANパーティー。長く家庭用ゲーム機が強かった日本だが、幅広い層にPCゲームが広がりつつある今、どんな形に成長していくのだろうか。
(日経エンタテインメント!8月号の記事を再構成 文/大谷真幸)
[日経MJ2019年8月30日付]
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