9億年前のブラックホールと中性子星合体 宇宙に反響

日経ナショナル ジオグラフィック社

スウィフトやその他の望遠鏡によって、LIGOやVirgoがとらえた衝突の残光が実際に確認されれば、それは天文学にとって極めて重大な意味を持つ。なぜなら、その光のおかげで、科学者は中性子星の内部構造を初めて見ることができ、またおそらくは相対性理論の限界を新たな方法によって確かめられるからだ。

「理論家にとっては夢のような話です」と、ノースウェスタン大学の物理学者で、LIGOチームの一員であるビッキー・カロゲラ氏は言う。

とはいえ、望遠鏡で何かが見えると決まったわけではない。現在の理論では、中性子星とブラックホールの衝突は常に光を発するわけではない。光の有無はふたつの天体の質量の比によって決まると予測されている。

中性子星の質量が大きい場合、中性子星がブラックホールに入り込むのにより時間がかかる。すると中性子星はブラックホールに極めて近い軌道を回ることになり、その結果、ブラックホールの重力によって中性子星が粉砕される可能性が高くなる。中性子星がバラバラになり、輝く紙吹雪のようにブラックホールに落ちていく前に光を放てば、望遠鏡でそれを観測できる。

一方、ブラックホールが中性子星よりずっと重い場合、ブラックホールは中性子星を大した苦労もなくまるごとのみ込んでしまい、光が発せられることはない。カロゲラ氏によると、科学者らは現在、状況をはっきりさせるため、S190814bvのデータを精査して、ブラックホールの質量が最大でどの程度かを見極めているところだという。

いずれにしても初観測

この他、可能性は低いものの、S190814bvに関わるふたつの天体の小さい方が、そもそも中性子星ではないケースも考えられる。

LIGOとVirgoは、合体する天体を推定される質量によって分類している。われわれの太陽系の太陽の3倍以下の質量はすべて中性子星であり、また太陽の5倍以上の質量はすべてブラックホールであると判断される。S190814bvの場合、小さい方の天体は太陽3つ分の質量に満たないと見られている。

太陽5つ分よりも小さなブラックホールは、理論的には存在する可能性がある。しかし、観測ではまだその兆候も見つかっていない。また、中性子星が太陽ふたつ分よりもずっと大きくなれば、崩壊してブラックホールになるというのが定説だ。太陽3つ分から5つ分の間の天体については、単にわれわれの観測がまだ不十分というだけで、S190814bvの小さい方の天体は小型のブラックホールなのだろうか?

「今回の現象によって解明が進むと思われる謎はふたつあります」と、ベリー氏は言う。「ひとつは、中性子星の最大質量はどのくらいか、そしてもうひとつは、ブラックホールの最小質量はどのくらいかということです」

あるいは重力波に見られるささやかな特徴から、S190814bvにおける小さい方の天体の正体を突き止められるかもしれない。また、今後の観測によって残光がとらえられれば(カロゲラ氏によると、これには数週間かかることもある)、小さい方の天体が中性子星であることが確実になる。

どちらの結果になるにせよ、これが史上初の観測となることは間違いない。「つまりはウィン・ウィンの状況というわけです」と、ベリー氏は言う。

(文 MICHAEL GRESHKO、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年8月20日付]

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