ドローンで無人島にBBQ食材 飛行4分、注文殺到
楽天と西友が、神奈川県横須賀市の猿島において国内初となるドローンによる商用配送の試みを行っている[注]。楽天としては2016年5月に始めたゴルフ場への配送サービス、2017年10月から2018年3月に行った福島県南相馬市における配送サービスに続く第3弾のドローン配送プロジェクトとなる。実際に猿島でバーベキューをしてドローン配送を体験した。
[注]2019年7月から9月の木・金・土曜日で、各日朝8時から注文を受け付ける。
東京湾に浮かぶ唯一の無人島である猿島は、夏には海水浴やバーベキューなどのレジャー客でにぎわう。コンロ類の持ち込みが禁止されており、バーベキューコンロなどは現地でレンタルできるが、食材に関しては島外から持ち込むことが基本となる。横須賀の老舗精肉店「横須賀松坂屋」で予約すれば、猿島への船が出る桟橋で食材を受け取れるので、ほぼ手ぶらでバーベキューができる。とはいえ、食材や飲み物などが足りなくなることもあり、そんなときにドローンで配達できれば便利、というわけだ。
今回準備した食材は、ボリューム満点の1ポンドステーキや骨つきフランクなどがセットになった「よこすかアメリカンセット」にカルビ、野菜セットなどを追加。もしかしたら追加は要らないかも?と心配になるボリューム感だった。
砂浜で潮風があり炭も難なくおこすことができる。レンタルのコンロと炭だったが十分な性能を発揮できているように感じた。
アプリで注文、飛行時間はわずか4分
追加不要かも、と危惧していた食材も、地元で買った地ビールや持参したワインなどのおつまみとしてどんどんなくなってゆく。完全になくならないうちにドローン配送で注文することにした。
注文は「楽天ドローン」の専用アプリで行う。猿島の対岸にある「西友リヴィンよこすか店」から配送される。西友リヴィンよこすか店から猿島までは直線距離で1.3キロほどだ。アプリで猿島エリアを選べばショッピング画面へと切り替わる。楽天ドローンアプリで追加の肉と焼肉のたれ、缶ビール、デザート用にアイスなどを注文。重量制限4キロのほぼ制限いっぱいになった。
決済は楽天の決済システム「楽天Pay」で行われる。楽天ポイントを使うことも可能だ。配送の便数は、天候やその他状況によって異なるが、1時間おきから30分おきで1日に4~8便ほど運行されているという。
ドローン配送は、定期的に運行されており、便はほぼ埋まっている状態だった。今回も残り1枠だったので、急いで注文したのが幸いした。「枠」を押さえられると、それ以上その時間帯の配送は行えない。将来的には複数ドローンを飛ばすことも考慮したいというが、着陸ポイントを増やすなどいくつかの課題もあるという。
当初は少ない本数だったが、利用状況が好調だったので徐々に便数を増やして対応しているのだそう。一回の積載量も安全やバッテリー消費を考慮して少なめに設定していたのを運行状況をみて上限を増やすなども対応も行なっているという。
注文してからどれくらいで届くかは枠の空きによる。飛行時間自体はアプリには「6分」と書かれていたが、実際には4分ほどだった。
ドローンが到着するタイミングには、バーベキューエリアにアナウンスがあり、ドローンの着陸を撮りたい一般の来島者がスマホやデジカメのレンズを向けるシーンが毎回見られるなど、ドローン配送そのものが一つのアトラクションとなっていた。
ドローンはプラスチック製段ボール箱のキャリングボックスをぶらさげて飛行。着陸ポイントに到着するとボックスを自動で切り離して再び戻ってゆく。商品は要保冷アイテムと非保冷アイテムで分けられており、保冷アイテムは保冷バッグに保冷剤と一緒に入っており、それ以外の商品は保冷バッグの外にラッピングされている状態だった。
この日は日差しが強く気温も高かったので、よく冷えた追加のビールやアイスクリームが心地よく、同行者にも好評を得た。
ドローンは自動操縦
気になるドローン配送の裏側はどうなっているのか?スーパー側も取材させてもらった。
西友リヴィンよこすか店はネットスーパーとしての配送対応も行なっているということで、ドローンの対応もスムーズに行えたとのこと。
ネットから受注した担当者は、店頭より商品をピックアップ。バックヤードに持ち帰って梱包作業を行う。配送用のボックスに納められた商品はドローン担当に引き渡され、重量チェックと注文の確認など、最終チェックを行なったあと、ドローンに積載する。
離着陸の際には、コントローラー(プロポ)を持ったスタッフがサポートにつくが実際の運行はコンピューターによる自動操縦となる。プロポによる操縦は緊急時の対応のみに限られる。西友の屋上を飛び立ったドローンは、猿島に向けて一路飛行を続ける。
荷物が届くと、注文したユーザーのスマホに通知されるので、通知を受け取ったユーザーは、受け取りに来るという流れだ。猿島で荷物を下ろしたドローンは、再び西友の屋上まで自動操縦で戻ってくる。
ドローンを使用した配送に関して楽天のドローンビジネスなどを担当する向井秀明氏にお話を伺った。
猿島でのドローン配送は首都圏で、商業サービスとして本格稼働するのは初の試みという。当初は1時間おきの配送など、スケジュールに余裕を持たせていたが、予想以上に利用が多かったので30分おきに変更した。配送料は500円かかるが、島内では買えないものが買えるのと、商品価格は店頭と同じなので割安に感じられたのではないかと想像しているという。
ドローン配送という物珍しさ、アトラクション的な意味合いもあって、多くの方がドローン配送を楽しんでもらえたのではないかとの分析だ。
また、猿島という人の多いエリアへの配送に関しても、全地球測位システム(GPS)に加え、リアルタイム・キネマティック(RTK)と呼ばれる基準局からの位置データを参照する技術により、数センチ以内の誤差で安全に運行できるようになったという。
(ライター 戸津弘貴)
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