白ワインは低糖質 しかも赤より殺菌効果が強力だった

日経Gooday

佐藤さんは、糖質を気にする人こそワインがお勧めだと話す。あまり知られていないが、ワインは醸造酒の中でも糖質が少ないのだという。「ワインの成分で特徴的なのは、有機酸が多い一方で、糖質が少ないことです」(佐藤さん)

文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」のデータでは、赤ワイン、白ワインの糖質は100グラム当たりそれぞれ1.5、2.0グラムとなっている。一方の、日本酒は3.6~4.9グラム、ビールは3.1~4.9グラム程度だから、ワインは大幅に糖質が少ないことが分かる。

ワインが低糖質なのはうれしいが、このデータを見る限り、今回のテーマとなっている白ワインは、赤ワインよりも糖質が高めだ。ビールや日本酒よりは断然少ないが…。先生、そこはどうなのでしょう?

「確かに一部の安価な甘い白ワインは、赤ワインよりも糖質が多く含まれているものがあります。しかし、一般的な辛口の白ワインの糖質量は、赤ワインの糖質量とほとんど変わりません。低糖質なのは、白ワイン、赤ワインとも共通にいえることです。辛口と表示がある白ワインを選ぶようにするといいでしょう」と佐藤さんは話す。

ただし、「アメリカやチリなどのニューワールドのワインの中で安価なものには、甘味が強く、糖質が高いものもある」と佐藤さんは話す。特にアメリカは甘口が好まれる傾向にあるのだという。佐藤さんのお勧めの1つは、フランス・アルザス地方の白ワイン。「アルコール度数も低めで、上品な甘さでおいしく、評価が高い」のだという。これはぜひともチェックしたい。

スパークリングワインの健康効果は、白ワインと同じ?

スパークリングワインは、白ワインを造った後、瓶やタンク内でもう一度発酵させて造られる。写真はイメージ=(c)Maksim Shebeko-123RF

さて、これまで白ワインの健康効果について述べてきたが、シャンパンなどのスパークリングワインはどうなのだろう? 冒頭でも触れたように、私は昔からのスパークリングワイン好きだが、私に限らずスパークリングワインは近年人気で、輸入量はここ10年で1.6倍に増えている。ぜひ知りたいところである。

「シャンパン(フランス)をはじめ、カヴァ(スペイン)やスプマンテ(イタリア)といった伝統的手法で造られたスパークリングワインは、まず白ワインを造り(一次発酵)、その後、瓶やタンク内でもう一度発酵させます。これが二次発酵で、この過程で二酸化炭素が生じ、ワインに溶け込むわけです」(佐藤さん)

「ベースとなるのが白ワインですから健康効果も白ワインに近くなるのですが、酵母などを含んだ澱(オリ)と接している時間が長くなるため、ポリフェノールに加え、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジンといった多くのアミノ酸成分が抽出され、その量が多くなります[注2]。つまり、スパークリングワインは、白ワインより健康効果は高いといえます」(佐藤さん)

「例えば、シャンパンの場合は、瓶内二次発酵を最低15カ月することが義務付けられており、高級なシャンパンになると3年以上になります。それだけアミノ酸などの成分も多くなります」(佐藤さん)

なお、スパークリングワインの中でも安価なものの中には、白ワインに炭酸を後から追加したものがある。「この炭酸後入れタイプのスパークリングワインに関しては、アミノ酸が増える効果は期待できません」(佐藤さん)

白ワインでは大丈夫なのに、赤ワインだと悪酔いする?

スパークリングワインは、白ワインを造った後、瓶やタンク内でもう一度発酵させて造られる。写真はイメージ=(c)Maksim Shebeko-123RF

白ワインの健康効果をひと通り理解したところで、最後に、「白ワインだと悪酔いしないのに、赤ワインだと悪酔いすることがある」のはなぜか――かねがね思っていた疑問を佐藤さんにぶつけてみた。

冒頭でも触れたが、私の場合、赤ワインを飲むと、翌日に残ったり、ひどい頭痛になることが多いのだ。私の周囲にも少ないながら、同じような症状を持つ人がいる。

先生、赤ワインを飲んで、頭痛がしたり、具合が悪くなるなんてことは、実際にあるのでしょうか?

「はい、ごく少数ですが、そういう方もいます。その原因は赤ワインの発酵プロセスで乳酸菌が生成するアミン類[注3]の一種であることが分かっています。赤ワインに限らず、漬物やチーズなど同じく乳酸菌を使って発酵する食品にはアミン類が含まれています。体内でアミン類を分解するには、特定の酵素が必要になるのですが、その酵素の活性レベルが低い方がいて、その場合、頭痛などを引き起こすのです。アミン類はフルボディの濃い赤ワインに特に多く含まれる一方で、多くの白ワインにはほとんど含まれていません」(佐藤さん)

なるほど、まさに私はこの酵素活性が低いのであろう。赤ワインとチーズのペアリングは向いていないのかも(号泣)。しかし物は考えよう。赤ワインで悪酔いし、懲りてしまった人でも、アミン類がほぼ含まれていない白ワインなら安心ということになる。

◇  ◇  ◇

これまでの佐藤さんの話を伺って、白ワインにも確固たる健康効果があることを知り、白ワイン&スパークリング派としては大満足である。そしてまた赤ワインだと悪酔いしてしまう原因も明確になり、心底スッキリした。ワインが低糖質というのも万年ダイエッターにとっては非常にうれしい情報である。もちろん飲み過ぎには注意し、適量(純アルコールにして20g、グラスワイン2杯程度)を守らなくてはいけないのだろうけど…。

ちなみに、白ワインは一般的に赤ワインよりアルコール度数が低いものが多い。「白ワインはアルコール度数が高いもので12%程度で、ドイツのリースリングなどは9%程度です。一方、赤ワインは、特にアメリカなどのニューワールドのワインでは15%を超えるものも増えています」(佐藤さん)。これは、温暖化の影響などによりブドウの糖度が上がっていることが影響しているのだという。

9%と15%とは、かなりの違いだ。同じ量のワインを飲むなら、白ワインの方がアルコール量が少なくなるということ。逆に言えば、同じアルコール量に抑えたいなら、白ワインの方が多く飲んでもOKということでもある。ささやかながらうれしい話だ。

実は取材帰りに佐藤さんお勧めのアルザスワインをしかと買ってしまった。これからはますます白ワインとスパークリングに傾倒してしまいそうだ。

[注2]フランスのロワール地方でミュスカデを使った白ワインを造る際、発酵が終わったワインを、オリを取り除かない状態で半年ほど熟成させる。この製法を「シュール・リー」と呼ぶ。甲州種を使った白ワインの製造にも導入されている。この製法で作ったワインは、酵母から抽出されるアミノ酸の量が増える。

[注3]アミンは、アンモニアの水素原子を炭化水素基などで置換した化合物の総称。

(酒ジャーナリスト 葉石かおり、図版 増田真一)

佐藤充克さん
山梨大学ワイン科学研究センター客員教授。農学博士。東北大学農学部卒業後、メルシャン入社。東京大学、カリフォルニア大学デービス校を経てメルシャン酒類研究所・所長に就任。NEDOアルコール事業本部、研究開発センター所長、山梨大学大学院ワイン科学研究センター、ワイン人材生涯養成拠点・特任教授、山梨県果樹試験場・客員研究員などを歴任。2018年から仙台秋保醸造所顧問。ワインおよびポリフェノールに関する論文多数。

[日経Gooday2019年8月8日付記事を再構成]

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