元気で働き続ける基礎知識 海堂尊氏が体のトリセツ
『トリセツ・カラダ カラダ地図を描こう』著者 海堂尊氏に聞く
「カラダをメンテナンスして色々なチャレンジを」と語る海堂尊氏
体の不調を感じて病院に行ったときに、医者の説明が良く分からないという経験をした人も多いだろう。「自分の体の中の、どこにどんな臓器があって、どう働いているか」をよく知らないことが一因だ。『トリセツ・カラダ カラダ地図を描こう』(宝島社新書)を書いた、作家で医学博士の海堂尊氏は「ツーリングに出かける人は最初にバイクの仕組みを理解してメンテナンスする。同じように仕事や勉強で『冒険』する人は自分のカラダを理解しよう」と提案する。
大人こそ、自分の体の基礎知識を
同書は一見すると、小学生など子ども向けに書かれた印象がある。本の帯のコピーにも「世界一簡単な医学書」とあるほどだ。しかし海堂氏は「子どもだけでなく、大人こそ読んでもらいたい内容を書いた」という。「医者にかかるときだけでなく、日常の生活や仕事の中でも役立つことを目指した医学の本で、一家に1冊置いてほしいという野望がある」と語る。
本の大まかな構成はこうだ。まず「自分のカラダの内部をイラストで描けるようになる」のが本書の目的だと述べる。次いで「総論」として、身体がどのような成分でできているかなど、体の仕組みをざっくりと解説。さらに「各論」で「頭部――大脳」「腹部――胃、大腸」など、細かい臓器の位置と役割を説明していく。最後に「医学概論」で、「生きることと死ぬこと」など命に向き合う医学とは何かを簡単に説明した上で、実際にカラダ地図を描くことを勧めて終わり、となる。
海堂尊著『トリセツ・カラダ カラダ地図を描こう』
これが仕事や生活にどう生かせるのか。海堂氏は健康診断を受けて精密検査をした後に、医者から説明を受ける場面を例に挙げる。「精密検査の結果、医者から『初期の胃がんの可能性があります』と言われたときに、えっと驚いた後に、ぽかんとしてしまう人もいる。病名にショックを受けるだけでなく、胃っておなかのどの辺にあるのかとか、実際に体のどこが痛くなるのかとか、分からないことで不安になる例もあるようだ」という。
「医者の立場からすると、体について知識がある患者と、臓器がどこにあるかもよく知らない患者とでは説明の手順や内容も違ってくる」(海堂氏)ことも知っておきたい。例えば膵臓(すいぞう)がどこにあって、どのような働きをしているかの知識があれば、「医者は患者に膵臓の基礎から説明する手間が省けて、その先の具体的な治療方法や対応法などより深い話し合いができるようになる」のだという。実際に病気の可能性が見つかった場合だけでなく、「健診結果を見て医者から生活上のアドバイスを受けるにしても、ずっと理解しやすくなるし、アドバイスをこう生かそうと思えるはず」(海堂氏)。