4カ国で『エヴァ』公開前イベント 同時多発中継で

日経クロストレンド

エヴァのステージから同時多発中継のイベントを仕掛けることを最終的に決めたのは19年3月のこと。それからイベントまでは技術検証を含めて「ドタバタだった」とカラーの海外展開戦略担当 音楽渉外担当 プロデューサーの島居理恵氏は振り返る。宣伝チームは10人強。7月に迫ったビッグイベントの準備に残された時間は少なかった。

核としたのは、映画宣伝では珍しいというアプリの活用だ。通常なら映画宣伝では、メディアで宣伝して認知度を上げながらプロモーションを拡大していく。しかし「エヴァは普通の映画とアプローチが違う」と紀伊氏。既に多数のファンが存在しており、「エヴァの情報配信はいつもファンファースト」(紀伊氏)。

エヴァに関する情報は、メディア向けのリリースを出す前にサイトなどで告知するのが通例だ。そのためまずはアプリで、すべての情報を配信できるようにした。7月1日に公式アプリをリリースし、これと連動してイベント情報を配信する。7月6日のイベント当日の整理券情報などもアプリを通じて配信した。イベント映像を同時中継する6カ所の会場の定点カメラ映像を見られる機能も用意した。庵野総監督からも、「各地定点記録をアプリ内に残したい」とリクエストがあったという。配信する映像にはSNS(交流サイト)への投稿規制もかけなかった。ファンがツイッターなどで拡散できるようにするためだ。

6カ所の定点カメラをアプリで見られるようにした(写真提供:東映)
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』。映画公開は2020年6月の予定 (c)カラー

アプリで旧作の本編視聴も可能

「映画公開1年前のプロモーションとしては極めて大きな規模。実写映画1本を作れるくらいの費用がかかった」と紀伊氏は笑う。ただ「眠っていたファンを起こせた」(同)。その成果はコスト以上に大きかったようだ。

イベント参加者、ライブ配信視聴者、ライブ配信後の視聴も含めたトータルの視聴者数は約200万人。7月23日時点で、アプリのダウンロード数は35万超で、イベント後は「商品化やプロモーションで活用したい、といった問い合わせが跳ね上がった」(グラウンドワークスの代表取締役、神村靖宏氏)。

ライブイベントが始まる前に流したCM映像は15秒CMが26本。バンダイナムコ、セガ、米ネットフリックス、セブン-イレブン、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)……などビッグネームが並ぶ。「本当に20年に映画を公開するのだと念押しできた」と成果を語る島居氏。7月中旬からは映画の本編を期間限定で無料視聴できるプロモーションも展開。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』『同:破』『同:Q』をすべて見られるようにすることで「ファンの裾野を広げる」(島居氏)ことを狙った。

今までエヴァをみたことがない層でも、無料アプリならリーチしやすい。しかも2時間の映画が無料で見られるのだから、誰しもが試そうと考えるかもしれない。今後もアプリを核としながら1年後の公開に向けてプロモーションを続ける考えだ。

左から東映企画調整部 兼 映画興行部 次長でプロデューサーの紀伊宗之氏、カラーの海外展開戦略担当 音楽渉外担当 プロデューサーの島居理恵氏、グランドワークスの代表取締役、神村靖宏氏(写真:吾妻拓)

(日経クロストレンド編集長 吾妻拓)

[日経クロストレンド 2019年8月22日の記事を再構成]

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