広がる民間の障害者雇用 さらなる増加、ITに期待

調査を担当した同社の人事担当向け情報サイト「人事のミカタ」の手塚伸弥編集長は「企業規模や業種によっても障害者雇用への対応力は大きく異なる。法定雇用率を含め柔軟な制度設計が必要」と主張しています。

渡辺香織・ひなり社長「業務内容充実で社員の働きがい追求」

障害者の雇用を増やすには何が必要でしょうか。伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の特例子会社、ひなり(東京・千代田)の渡辺香織社長に、障害者の働き方や、雇用の現状を聞きました。

――ひなりの社名の由来、設立以来の社員数の推移は。

渡辺香織・ひなり社長

「ひなりは『日々成長する』、『ヒナが成長する』という思いを込めた造語です。会社が発足した2010年4月時点の社員数は24人(うち障害者21人)で、19年4月時点の社員数は101人(うち障害者75人)と9年間で約4倍に増えています。75人の平均年齢は33歳。CTCと合算した障害者雇用率は2.52%となりました」

――御社の「農福連携」への取り組みは「ひなりモデル」と呼ばれています。どんな工夫をしていますか。

「設立時から、浜松市に設けた拠点を通じて農作業の業務請負に取り組み、先進事例として一定の評価を受けています。浜松オフィスでは現在、29人の障害者を雇用しています。29人の平均年齢は26歳。7軒の地元農家と連携し、定植、収穫、田畑や農園の整備といった作業を担っています。アスパラガス、タマネギ、トマト、メロン、お茶、チンゲンサイなど取り扱う農作物は様々です」

「障害のある社員と、弊社の『サポートマネージャー』が一緒に農家を訪問します。農作業の工程を分解し、作業手順書と必要な補助具を準備します。業務請負形式のため、農家には労務管理の必要がなく、コスト管理も容易です。農家による作業の指示は、サポートマネージャーが受けるので、農家は安心感をもって作業を依頼できます。企業の観点から作業手順の見直しを提案することもあり、農作業の生産性の向上に貢献できます。連携している農家は、田畑や農園を増やし、業績も拡大しています」

――農作業に携わる社員の満足度は。

「アンケート調査では、『農家から感謝の言葉をもらい、すごくやりがいを感じる』、『色々な作業ができる』、『仕事がわかりやすくて楽しい』、『工場などに比べて機械の音がうるさくない』、『お互いが助け合いフォローし合える』といった前向きな回答が目立ちました。これからも社員の働きがいを追求していくつもりです」

――農作業以外にはどんな業務がありますか。

「社員向けマッサージサービス、オフィスの清掃からスタートし、ICカードのクリーニング、文具やコピー用紙の補充、ポスターの張り替え、コンピューター機器を解体して再利用部品と破棄部品に分別する業務などに広げています。18年度からは、コンビニエンスストアの店内清掃や商品棚の整列、コチョウランの造園作業も請け負っています」

――企業や国、自治体が障害者雇用に積極的になり、採用難に悩む企業もあります。

「当社は今の時点では採用難とは感じていませんが、来年以降の動向を注視しています。法定雇用率の引き上げが決まっているだけに、需給が逼迫する可能性があります。首都圏では、清掃業務だけの会社は人気がなくなり、会社の雰囲気や楽しさを重視する人も増えています。CTCグループの強みであるIT(情報技術)を活用して業務内容をさらに充実させる予定です。もっと働きたいという声に応え、人事制度や表彰制度の改革も計画しています」

(編集委員 前田裕之)

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