まさかこんな所でこの人に 奇遇恐るべし立川談笑

イラストはイメージ=PIXTA
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これは弟子の吉笑と交互に連載する「マクラ」エッセーです。今回は「奇遇」、つまり「偶然の出会い」がテーマです。たまにありますよね。「まさか、こんな所でこの人に会うなんて!」っていう出会いが。「奇遇」はいつも感動的です!

「ねえねえ。ちょっと聞いて。こないだ、驚いちゃったの!」「どうしたの?」

「吉田マチコさんって、きっと知らないよね。昨日、駅でバッタリ会っちゃったのよ!」「えー、誰それ? 有名人?」

「有名だけど、たぶん知らないと思う。けど、すごい偶然なの!」「どしたのどしたの?」

「えーとね。ホラ、あたし若いころ和歌山で会社を立ち上げたじゃない? ベンチャーで。『絶対ムリだから!』って言われてたのを、その吉田マチコさんが……駆け出しの経営アドバイザーだったのね。その人が、『間違いないから、やりな!』って後押ししてくれて。で、始めた会社がわりと軌道に乗ったところで、彼女から今度はいきなり真逆のアドバイスをされて、『えー!』って思ったけどそれに乗ったのよ。それが大きな転機で、今の私があるってワケ。あの頃若かった吉田さんも大出世しちゃってさあ! それが、今日だけ、ホントに今日だけ! 台湾からたまたま日本に帰って来てたんだって。そんな二人がそこの駅で会ったんだよ。すごいと思わない?」「あー、うん。…そ、そうだね」

と、このように。「偶然の出会い」を語る場合、本人は大いに感動していても聞かされる人にとっては「ああ、考えれば確かにすごいけど。…んで?」ってなる点が問題です。そこを自覚した上で、これから私の話をします。

喫茶店で、駅のホームで、自宅前で…

いくつか列挙してみます。皆さん、「…んで?」のご用意を。

〇半蔵門の喫茶店に入ったら、志らく師匠がいた。

〇JR中野駅の中央・総武線ホーム。乗ろうとしたドアから神田松之丞さんが出てきた。

〇地下鉄新御茶ノ水駅のホームに下りたら、師匠談志がいた。

〇自宅の前の道路で「おーい! 談笑~!」の声に振り返ると小倉智昭さんだった。

こんなのがいくらもあります。さて、そろそろ本気の「…んで?」が連続する偶然遭遇エピソードを披露します。

話がスタートするのは、瀬戸内海の因島。ご当地ゆかりの村上海賊にまつわる祭の取材でのことでした。きっかけは、ベストセラーの時代小説『村上海賊の娘』。著者の和田竜先生にインタビューするのが目的です。

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