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「笑い」がなくても感動は伝わる。画像はイメージ=PIXTA

「笑い」がなくても感動は伝わる。画像はイメージ=PIXTA

ビジネスの現場では「プレゼンテーション能力」を問われる場面がしばしば訪れる。取引の相手先に「話がつまらない」と思われてしまうと、受注獲得に失敗しかねない。社内の会議なら「説明下手」で評価が下がることもある。どうすれば、相手が「面白い」と思う説明スキルが身につくのか。『感動する説明「すぐできる」型』(PHP研究所)の著者、犬塚壮志氏に聞いた。

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人前で話をするときは、冒頭の「つかみ」で笑いを取らなければいけない――。企業人の中には、こう思い込んでいる人も多いようだ。しかし大手予備校で人気講師として活躍した犬塚氏は「説明の中に『笑い』を入れると、聴き手の頭の中に説明した内容が残りにくい」と指摘する。駿台予備学校で複雑な論理や公式などを受験生に説明してきた経験から、犬塚氏は次のように理由を推測する。「笑いによって、聴き手は瞬間的な満足度を得られる。しかし、笑いが中心になる話は脳に取り込まれず、そのまま流れてしまうのではないか」

ネタの面白さと「伝わる」は別

「笑い」に対する過大評価だけではない。人前で話をすることに苦手意識を持つ人には、他にも勘違いしやすい点がある。一つは「私はもともと話がうまくないから、伝わらない」という思い込み。もう一つは「そもそも話のネタ(素材)がつまらないので、ウケるはずがない」という早合点だ。

これに対して犬塚氏は「話し方の拙さやネタの面白さは、まったく問題ではない。どんな人でもスキルを身につければ説明は上達する」と断言する。拙い語り口からは、人柄の良さがにじみ出ることもある。好感を持って聞いてもらえることも多い。また、話のネタというのは、本人が相手に「伝えたい」と考えている情報そのものだ。これを大きく変更してしまうのは、本末転倒となる。

「話がつまらない」と思われてしまう本当の原因はなにか。犬塚氏は「伝えることを妨害する3つの『壁』」を指摘する。第1は「認知の壁」だ。ここで引っかかると、そもそも話の内容自体が全く相手に伝わらない。「複雑すぎる」「哲学的すぎる」「抽象的すぎる」など理由はさまざま考えられよう。聴き手の反応は「全然、意味がわかんない!」となる。

第2は「私事(わたくしごと)の壁」で、「自分には関係ない」と聴き手が思ってしまう場合だ。3番目に来るのは「獲得の壁」。聴き手が「自分にはできない」と感じてしまう話がこれに該当する。話の内容は理解できるし、自分にも関係するけれど、なんらかの理由で実現性が感じられない。「そうは言ってもね……」と反応されるケースだ。

首尾良く3つの壁をクリアできたとしたら、少なくとも話は相手に伝わっている。問題は、最終的に話を「面白い」と思ってもらえるかどうかだ。きちんと説明できたと話し手が感じたとしても、聴き手から「そんなの当たり前でしょ」「そりゃそうだ」と思われてしまえば、成功とは言えない。

いかにして好奇心に訴えるか

この「当たり前でしょ」を最終的にクリアするためには、好奇心に訴えることがカギになる。犬塚氏は「人間は知的好奇心を刺激されると、面白いと思って満足する。私は『性賢説』を信じています」と言う。好奇心を刺激されれば心が動く。つまり感動する。そして聴き手はワクワクした心を他人にも共有してもらいたくて、その話をいろんな人に伝えたくなる。そうなれば、説明は成功したと言えよう。

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