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急速に氷失う北極圏 覇権争いに米国・中国が参戦

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ナショナルジオグラフィック日本版

北極圏は決して不毛の地ではない。気候変動で氷が解けるにつれ、むしろ経済活動の場として世界の耳目が集まる。氷の下に眠る資源、新航路――これらは新たな対立の火種であり、グリーンランドを買いたいという話まで登場したのは記憶に新しい。ナショナル ジオグラフィック2019年9月号では、北極をめぐる各国の思惑と、北極をとりまく現在をレポートしている。

◇  ◇  ◇

2019年5月初め、マイク・ポンペオ米国務長官がフィンランド北部に飛び、北極圏の8カ国と先住民団体の代表で構成される「北極評議会」の会合で演説した。同評議会は設立以来およそ20年にわたり、北極圏各国と先住民が持続可能な開発や環境保護などで協議、協力する場として機能し、気候変動対策にも積極的に取り組む姿勢をとってきた。それとは正反対の立場をとる政権の特使として、ポンペオがこの場に乗り込んできたことには、何とも違和感があった。

「米国は北極圏に領土をもつ国として、北極圏の未来のために今こそ立ち上がる」。ポンペオは公式会合の前夜に開かれたイベントでそう宣言した。「なぜなら、かつては不毛な奥地とみられていた北極が……それとはかけ離れた商機と豊かさの最前線となったからだ」

かつては氷に閉ざされた不毛の地とみられていた北極が、今では大きな可能性を秘めたフロンティアの名をほしいままにしている。北極は経済活動の場として注目されるようになった。

海氷に覆われた水域の面積は例年、夏に縮小し、冬になると拡大するが、今では夏季の縮小が記録的な規模になり、縮小が加速しているとの見方もある。米航空宇宙局(NASA)の研究者による推定では、海氷面積は年平均およそ5万4000平方キロのペースで縮小しているという。2014年の「全米気候評価」報告書では、2050年までに北極海は夏に氷がない状態になると予測されている。

「予想よりもはるかに早く事態が進んでいます」と、米国のシンクタンク「ウィルソン・センター」の極地研究所のマイケル・スフラガ所長は言う。「海が目の前で刻々と開かれようとしているのです」

北極をめぐる各国の争奪戦は領有権争いとは違う。一部にまだ係争中の水域があるが、それを除けば、北極点も含め、北極海の海底の大半は、すでにそれぞれの国の領有権が確定している。各国政府と企業が虎視眈々と狙っているのは、金、ダイヤモンド、レアメタル(希少金属)などの鉱物、石油、天然ガス、さらには漁業資源など、膨大な価値のある未開発の資源と、海上輸送コストの大幅削減が見込める新航路だ。

ロシアとノルウェーは過去10年間、北極圏諸国のなかでも最も活発に開発計画に着手し、石油・天然ガス採掘のインフラや、大型コンテナ船が利用できる大水深の港湾の整備、氷に閉ざされた北極海を航行できる船舶の建造に巨費を投じてきた。一方、中国もロシアの天然ガス開発計画を支援し、その他の北極圏諸国に開発資金の借款を申し出ているだけでなく、国産の砕氷船を複数建造してもいる。

この動きと対照的だったのが、これまでの北米諸国の動きだ。カナダと米国は、2国合わせて北極海沿岸の半分近くを領有しているにもかかわらず、北極にあまり目を向けてこなかった。

ロシアは砕氷船を51隻保有しているが、米国が保有する現役の砕氷船はわずか5隻。しかも北極圏内には大水深の港湾が一つもない。北極の資源開発に関心が集まるなかで、権益争いが対立に発展し、さらには欧米諸国とロシアや中国との間で新たな紛争が勃発する可能性さえ、ささやかれ始めている。ポンペオが北極評議会に出席した背景には、こうした懸念があった。

「北極地域は覇権争いと競争の場になっている」とポンペオは語った。「戦略的な関与が必要な新時代に突入しつつある……この地域における我々の権益すべてに対する新たな脅威もその一部だ」

ポンペオがこう考えているなら、言うまでもなく米国にとっての問題は、一部の国々がすでに開発競争で大きく先行していることだ。

北極のフロンティア時代の始まりは、2007年8月にさかのぼる。ロシアの深海潜水艇2隻が水深4000メートルの北極点の海底に到達し、チタン製のロシア国旗を立てたのだ。その模様をとらえた画像は世界中に送信され、欧米諸国はすぐさま抗議の声を上げた。

その1カ月後には、人工衛星による観測で、北極の海氷面積が観測史上最小になったと発表された。「北極の氷の消失としては、人類の知る限り最大規模でした。最も極端な気候モデルですら予測していなかったレベルです」と、南カリフォルニア大学で国際関係学を研究するジョナサン・マーコウィッツ教授は言う。「この衝撃的なニュースで、氷が急速に消えつつあることが誰の目にも明らかになり、それに反応して動きだす国が出てきたのです」

現在ほとんどの面で、北極で優位にあるのはロシアだ。年間を通じて極北の海で活動できる世界最大の艦隊を保有し、北極圏内に何十もの軍事基地を置いている。それに比べ、北極圏にある米軍基地は、グリーンランド北部の土地を借りて建設した飛行場1カ所だけだ。

さらにロシアは北方に新たに常駐部隊を派遣し、潜水艦の活動を活発化させ、北極上空に軍用機を飛ばし、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の領空にたびたび接近している。しかしマーコウィッツら数人の研究者によると、ロシアの北方における活動は、グローバルな野望よりも、国内の計画を反映したものだという。

ロシア領の北極圏には200万人が暮らし、ムルマンスク、ノリリスクなど大都市もいくつかある。カナダと米国の北極圏の人口を合わせても、その4分の1足らずだ。

ロシア経済はエネルギーや鉱物資源に大きく依存していると、マーコウィッツは説明する。そのためロシア政府は北極を「戦略的な未来の資源基盤」と位置づけているというのだ。

米国のシンクタンク「スティムソン・センター」の上級フェロー、ユン・スンによると、中国の北極進出もそれと同様に、領土ではなく、資源確保に的を絞った戦略だという。スンによれば、ロシアの石油・天然ガス事業への投資に加え、中国が特に関心を寄せているのは、新航路の利用だ。この航路を使えば、アジアの港湾と欧州の市場を結ぶ海上輸送を最大で2週間短縮できる可能性がある。

中国政府は2018年1月、北極政策に関する白書を発表した。そのなかで中国は、自国を「近北極国家」と位置づけ、他国と協力して、商業と研究調査のための新航路「北極シルクロード」を開拓する構想を明らかにしている。

米国とカナダは何十年もの間、北方の領土を開発しようともせず、そこに住む人々に投資する意欲ももたなかった。こうした姿勢はしばしば、北極圏の先住民をないがしろにするばかりか、苦しめるものでもあった。北極圏に眠る商機の可能性が語られるとき、ほぼ常に先住民は蚊帳の外に置かれてきたから、なおさらだ。

(文 ニール・シェイ、写真 ルイ・パルー、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック日本版 2019年9月号の記事を再構成]

[参考]要約して紹介した「北の果ての覇権争い」は、北極の現在を様々な角度からレポートしたナショナル ジオグラフィック日本版9月号「総力特集『北極』」の特集の1つです。ほかにも、2036年夏にも氷が消えるといわれる北極海の温暖化の行方をグラフィックで示す「氷なき北極」、「凍土に眠る炭素の脅威」、トランプ大統領の買収発言の舞台となったグリーンランドで温暖化を研究する科学者を追う「温暖化に注ぐ熱視線」、「ホッキョクオオカミと過ごした時間」など、を掲載しています。

ナショナル ジオグラフィック日本版 2019年9月号

著者 : 日経ナショナルジオグラフィック
出版 : 日経ナショナルジオグラフィック社
価格 : 1,110円 (税込み)

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