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始まりはパリのオニオングラタンスープ 手塚理美さん

食の履歴書

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NIKKEI STYLE

昨年、芸能生活50周年を迎えた女優の手塚理美さん(58)。食の細かった少女は、撮影で訪れたパリでオニオングラタンスープに出合い、料理に目覚める。その後も、時代の最先端を行く大人たちに鍛えられた。食への関心は、母になり家庭に回帰する。

カップの縁すれすれに敷きつめられたフランスパン。スプーンを差し入れると、隙間から熱々のスープがあふれ出す。それを食べたのは中学1年生の夏休み、初めての海外旅行のときだ。「世の中には、こんな知らない料理があるんだ」と驚いた。

1975年に繊維メーカー、ユニチカのマスコットガールに抜てきされた。初仕事がフランスでのカレンダーの撮影。世界的イラストレーターのレイモン・ペイネさんが撮影するという企画だった。夢だったベルサイユ宮殿とともに、オニオングラタンスープは鮮烈な思い出となった。

「この味はどんな食材を組み合わせているんだろう。それまで考えたこともない興味がわいてきたんです」。それ以来、どうにかして自分で作ってみたいと夢見てきた。

高校生になり雑誌を見ながら初めて挑戦したところ、牛乳を入れてしまって大失敗。「父だけは『おいしい、おいしい』と残さず食べてくれましたが、おなかを壊しちゃった。父の愛情を感じました」

料理の世界をさらに広げてくれたのが、芸能界のグルメな大人たちだった。

17歳、高校2年生のときだった。当時、レコード会社の社長を務めていた吉田拓郎さんから歌手デビューを勧められた。心が動いた。でも「歌は本当に下手だったので、どうしても嫌でした」。

当時よく聴いていたのがユーミン。そこで「ユーミンの曲なら歌いたい、とむちゃを言ったんです。あきらめてくれるかと思って。そうしたら、願いがかなっちゃった」。デビュー曲「ボビーに片想(かたおも)い」は松任谷由実さんの作曲、松本隆さんの作詞。当代の黄金コンビだ。

このときの音楽スタッフが食通ばかりだった。今はない地中海料理の名店「FLAGS」(渋谷・代官山)など、流行の最先端の店に通った。イタリアン「キャンティ」(港・麻布台)には、最初の写真集を撮った沢渡朔さんによく連れて行ってもらった。

幼いころは食に興味がなく、食べる量も少なかった。「母は野菜を刻んだおじやを作ってくれて、それを何とか食べていました」

幼稚園のときの懐かしい記憶がある。池上本門寺近くの自宅の縁側。料理上手の祖母がつくったキュウリやナスの漬物とおにぎりを、おやつ代わりに食べた。おばあちゃん子だった。

家庭を持つと、家族においしい料理を作ってあげたいという思いが募る。1990年に俳優の真田広之さんと結婚(97年に離婚)。2人の男児をもうけた。

「子供を授かったとき、体にいいものを食べようと思い、無農薬野菜を取り寄せました」。芸能活動のかたわら様々な料理を食べてきた経験が生きる。「味の組み合わせの方程式のようなものが頭にあったので、家では創作料理ばかり作っていました」

それでも長男は手塚さんに似て食が細かった。アンパンマンや戦隊モノのキャラクターをかたどったお弁当を作って、何とか残さずに食べてくれるようになった。「食べてほしいという思いで自然にがんばれました」

シングルマザーとして慌ただしい毎日を送るなか、ふとよみがえる記憶があった。

高校生のとき、母がお弁当に手紙を添えてくれた。「中間テスト頑張って」というように。それが友人の間でちょっとした人気になり、3人分のお弁当を作ってくれたことがあった。「ありがとうと思いながら食べると、体にもとてもいい」と確信している。

「『いただきます』って日本人の食に対する気持ちがよく表れた素敵(すてき)な言葉だと思うんです」。家庭料理も外食もロケ弁当もすべて、誰かが誰かに食べてもらうために作っている。「いただきます」と口にすると、「命に感謝して残さずに食べようという謙虚な気持ちになります」。

28歳と24歳になる2人の息子は、手塚さんの影響もあり自分で料理をする男性に育った。次男は北海道で、鹿を丸1頭残さずに食べる体験プログラムなど自然と食文化を伝える活動に従事している。

心に刻まれた「いただきます」の思いは、祖母から息子たちまで4代にわたり引き継がれている。

緑のカレー、優しい辛さ

東急大井町線の緑が丘駅から桜の緑道に沿って3分ほど歩いた住宅街にあるレストラン「緑の光線」(電話03・3723・0913)。手塚さんの友人でもある安藤加恵子さんがオーナーの店だ。

店名は手塚さんがフランス映画からつけた。水平線に太陽が沈む瞬間に放たれる緑の光線を見ると幸せになれるという。決まって注文するのは、店名とも響き合うグリーンカレー。「絶妙な味のバランスと優しい辛さ」が気に入っている。おばあちゃんの味である、キュウリとナスの漬物も添えられている。

テーブル席が5つほどのかわいらしい店内では絵画や音楽のイベントも開かれ、手塚さんも参加する。「様々な味が融合した料理を通じて人と人がつながればうれしい」と安藤さんは話す。

最後の晩餐

炊き立てのご飯でつくったおにぎり1個。おいしいお米と塩と海苔(のり)で柔らかく結んだおにぎりは究極の料理だと思う。具を入れるなら梅干しかな。誰かににぎってもらうおにぎりほどおいしいものはない。結局、おばあちゃんの味が私の原点かもしれません。

(大久保潤)

[NIKKEIプラス1 2019年8月31日付]

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