上場子会社、深刻化する一般株主の軽視(安東泰志)ニューホライズンキャピタル取締役会長

このTOBにも大きな問題がある。まず買い付け価格が発表直前の株価1871円を約50%上回る1株2800円と大幅に高く設定された半面、買い付け予定株数はわずか9%強だったことだ。伊藤忠はあまり資金をかけずに株式保有比率を40%に高めることができる半面、一般株主は9%程度しか恩恵にあずかれない。デサントの株価はこのところTOB価格のほぼ半値の1500円前後で推移しており、大半の一般株主はむしろ損失を被っている。

特に見逃せないのはこのTOBにデサントの独立社外取締役2人、独立監査役2人が反対意見を表明していたことだ。伊藤忠の行為はヤフーと同様に「実務指針」とコーポレートガバナンス・コードに反するといえる。伊藤忠がデサントを支配したいのであれば、すべての一般株主に株式を売る機会を提供するために100%の株式を買い取るのが筋だろう。欧州連合(EU)諸国の多くではこうした場合にすべての株式を買い取ることが義務付けられている。

法的規制も視野に入れるべき

伊藤忠の子会社であるユニー・ファミリーマートホールディングスは、傘下の呉服小売りの「さが美」の株式を売却する際に1株90円の買い手がいるにもかかわらず、1株56円のTOBに応じて一般株主の利益を損なったことがある(詳細は16年10月31日付「企業統治改革、海外投資家はどう思うか」)。またソフトバンクの上場やルノーと日産のケースでも親子上場に関する懸念(詳細は18年12月24日付「日産、ソフトバンク、革新投資機構の問題」)が存在しており、日本では親子上場問題に対する取り組みが全般に甘い印象が強い。

そもそも親子上場の是非自体が議論されるべきだが、親子上場が認められる場合でも親会社に一般株主を保護する法的な義務を負わせるなど、もう少し踏み込んだ規制が必要だと筆者は考えている。

安東泰志
1981年に三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行、88年より、同行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。2002年フェニックス・キャピタル(現ニューホライズンキャピタル)を創業。三菱自動車など約90社の再生案件を手掛ける。東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。事業再生実務家協会理事。
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