上場子会社、深刻化する一般株主の軽視(安東泰志)ニューホライズンキャピタル取締役会長

写真はイメージ=123RF
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株式会社は少数株主を含む株主一般の利益、そして社員や取引先を含む様々なステークホルダー(利害関係者)のために存在するのであり、大株主だけのためにあるわけではない。そして取締役会はステークホルダーの利益を図るために存在する。一般株主と大株主の間で利益相反が起きやすいとされるのが、上場企業が子会社を上場させる「親子上場」である。上場子会社のコーポレート・ガバナンス(企業統治)に対する投資家の視線は厳しさを増しているが、一般株主軽視と受け止められかねない例は足元でも続いている。アスクルとデサントのケースをみてみよう。

アスクル取締役人事案、ヤフー反対で否決

8月2日に開催されたアスクルの株主総会で岩田彰一郎社長の取締役再任が否決され、岩田社長の支持を表明していた社外取締役3名も再任されない異例の事態となった。アスクルの約45%の株式を保有するヤフーが再任に反対したからだ。

アスクルとヤフーは2012年4月に資本・業務提携し、同年10月に消費者向けネット通販の「LOHACO(ロハコ)」事業を開始している。もともとオフィス用品の物販事業を手掛けていたアスクルにとってはビッグデータ時代をにらみ、次の成長の軸に据えようとしていた事業だった。しかし現状は赤字。そこでヤフーは19年1月にロハコ事業をヤフーに譲渡するよう要求し、アスクル側が断ったことが対立のきっかけだ。株価も17年2月の倉庫火災の影響を引きずり、低迷していた。

アスクルは監査役会設置会社だが、岩田社長と独立取締役3人、顧問弁護士など計6人で構成する独自の指名委員会・報酬委員会を持ち、取締役や重要な役職員の選任と解任に関する事項、報酬における基本方針・個別報酬などについて答申案を策定している。

経産省「実務指針」は一般株主の保護を規定

上場子会社は親会社ないし支配株主(実質的な支配関係がある場合を含む)と一般株主との間で利益相反が起きることがある。例えば親会社への資金貸し出し、親会社からの資材調達、親会社への事業譲渡などを迫られた場合だ。一般株主からすれば子会社は親会社の利害に関係なく企業価値を最大化する経営戦略を取るべきだが、親会社の要求を受け入れることで本来得られるはずの収益機会を失いかねないからだ。

経済産業省が19年6月に公表した「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」(以下「実務指針」)は、まさにこの利益相反から一般株主を保護するためのガイドラインを示している。