寝ている間の歯ぎしりや気づかぬうちの食いしばりが、歯が折れる「破折(はせつ)」の原因になることがある。歯に繰り返し過度な力がかかっているためだ。虫歯や歯周病で歯を失う人が減っている一方、この破折による抜歯が増えている。
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睡眠中にキリキリと歯をこすり合わせる「歯ぎしり」、知らないうちに歯をかみしめている「食いしばり」。これらは総称して「ブラキシズム」と呼ばれ、歯が折れる一因になっている。
破折は、歯周病、虫歯に次いで歯を失う原因の3位。破折の多くが、歯の根っこにひびが入って折れてしまう「歯根破折(しこんはせつ)」だ。最近増えており、30代、40代も例外ではない。
歯根破折の原因は、歯ぎしりや食いしばりなどで歯に過度な力がかかることだ。「5~15%の人が睡眠中に歯ぎしりをしている。歯ぎしりをすると歯に体重以上の大きな力がかかることもある。それが日常的に繰り返されることで歯根部にひびが入り、やがて折れてしまう」と、昭和大学歯学部歯科補綴学講座の馬場一美教授は話す。他にも、硬いものをよく食べる人や早食いをする人も、かむ力が強くなりすぎて歯が折れるリスクが上がる。
また虫歯の治療で神経を抜いている歯も要注意。神経を取ると歯自体が弱くなるからだ。「神経を取った後、歯の中に金属芯を入れて差し歯にしている人も多い。金属は硬すぎるため、かんだ力が歯根に均等に分散せず、特定の場所に集中する。このため治療から5~10年かけて歯根破折に至る人が少なくない」と、眞坂歯科医院の眞坂信夫会長は説明する。
次回は歯ぎしりや食いしばりへの対策を取り上げる。


(ライター 佐田節子、構成 堀田恵美)
[日経ヘルス2019年8月号の記事を再構成]