多くのネットリンチでは、このリツイートによって虚偽の情報が加速度的に拡散します。名誉毀損やプライバシー侵害などにあたるツイートをリツイートした場合、そのリツイートも損害賠償責任を負う可能性が複数の判例で認められています。

他人の文章をリツイートしただけで、自分で情報を発信したわけではないという言い訳は通用しないのです(フェイスブックの場合なら、シェアがこれに当たるでしょう)。これに対し、「いいね」を押しただけの場合には名誉毀損の発言と同視することはできないとする判例があります。ただし、まだ解釈が固まっているとは言い難いように思われます。

発信者情報は開示される

さて、あなたは事実無根であるにもかかわらず「犯人の親族」としてネット上に名前が出てしまっているとのことです。これは、虚偽の事実を示して公然とあなたの社会的評価を低下させる行為で、まさに名誉毀損です。まずはこれ以上の偽情報拡散を防止するため、SNSや掲示板に削除依頼をすべきでしょう(なお、常磐道あおり運転暴行事件で「犯人扱い」された女性は、早い段階で弁護士名で警告を発信したため「炎上」は比較的早期に沈静化したようです)。

もちろん、それで過去の権利侵害が消えるわけではないので、名誉毀損を理由に損害賠償を請求することが可能です。確かにツイッターは匿名で利用できますが、法的手続きをとれば発信者情報が開示され、身元は特定されます。ネット掲示板でもSNSでも完全な「匿名」はありえないことを十分意識してから書き込みをすべきです。

民事上の損害賠償請求は「情報源」となった元の投稿者のみならず、リツイートなどを行って拡散した者やデマ拡散に加担したまとめサイト(トレンドブログ)の運営者などが被告になりえます。認められる損害賠償の額については数万円から数十万円程度が「相場」ではありますが、事情によっては百万円を超える賠償が認められることもありえます。

近時、週刊誌などの出版社に対する名誉毀損訴訟での賠償金額が高額化傾向にあることと比例し、今後はSNSやネット書き込みにおける賠償額も高額になっていくのではないでしょうか。

ネットリンチは「あおり運転」と同じ

週刊誌が時間と費用をかけて取材をして記事にしても、時として名誉毀損が成立し、出版社が賠償責任を命じられている例は多々あります。椅子に座ったままネット上で集めた情報だけで「犯人」や「犯人の親族」だと断定する行為がいかに危険かを認識すべきです。

「何の落ち度もない善良な市民が被害者になった。加害者はけしからんから特定して徹底的にたたく!」

こういう独りよがりな「正義感」が引き起こすネットリンチが「何の落ち度もない善良な市民」を被害者にしています。まさに「あおり運転」と同じです。

志賀剛一
志賀・飯田・岡田法律事務所所長。1961年生まれ、名古屋市出身。89年、東京弁護士会に登録。2001年港区虎ノ門に現事務所を設立。民・商事事件を中心に企業から個人まで幅広い事件を取り扱う。難しい言葉を使わず、わかりやすく説明することを心掛けている。08~11年は司法研修所の民事弁護教官として後進の指導も担当。趣味は「馬券派ではないロマン派の競馬」とラーメン食べ歩き。
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