powered by 大人のレストランガイド
「担々麺つるや」の「汁無し担々麺」

担々麺つるや

<これぞ、ザ・穴場店。新橋駅から徒歩2分のビルに超実力店>

その存在を見逃していたことは、不覚としか言いようがない。

カウンター席で対峙した丼から麺をつかみ取りズズっとすすり上げた瞬間、猛烈な恥じらいの感情がこみ上げた。紛れもない。ここまでハイレベルな店が誕生していたことを看過していた自らの不勉強を恥じ入るしかない。

その店の名は「担々麺つるや」。18年10月25日に産声を上げていた。ロケーションは多数の飲食店が軒を連ねる新橋2~4丁目かいわいの路地裏。こぢんまりとしたビルの3階にひっそりとたたずむ店舗は現場を通り掛かったとしても、見過ごしてしまうほど目立たない。

新橋のビル3階にあり、見過ごしてしまいそう

同店が提供する麺メニューは屋号が示すとおり、「担々麺」と「汁無し担々麺」の2種類。先般、人手が足りずに閉店した赤坂の人気店「東京麻婆食堂」の移転リニューアルであり、現在は、店主がワンオペで厨房を切り盛り。私が足を運んだ時点で、既にしっかりと固定客を確保できているようで、キビキビと無駄のないオペレーションを遂行しながらも、お客さんへの配慮を欠かさない店主の姿が印象的だった。

いずれのメニューも甲乙が付けがたい水準の高さを誇るが、本場・中国四川省の味わいを堪能したいのであれば、発祥時の原型をとどめた「汁無し担々麺」が鉄板チョイスだろう。

注文時に、辛さのランクを「控えめ」「普通」「辛め」の三段階から指定することが可能。

いずれの辛さランクにおいても、味蕾を突き刺す「辣(唐辛子&ラー油)」の辛みと、電流のようにピリリとしびれる「麻(花山椒)」の辛みが口内で真正面からぶつかり交錯。幾ばくかの間隙を経て、いずれか一方だけではたどり着けない「辛ウマ」の極致へと至る、ダイナミズムに満ちあふれた味構成だ。

日本式担々麺でデフォルメされがちなゴマの甘みをあえて脇へと退かせ、香辛料でしか表現し得ない「辛みの中に潜む甘み」を演出する。粘度をしっかりと確保しながらも、軽妙な食べ口を実現するなど、センスの良さもキラリ。

優秀なのは担々ソースだけではない。ソースとタッグを組ませる麺も、モッチリした食感と滑らかな麺肌とが相まって、食べ手に揺るぎのない好印象を刻む逸品。

いずれのパーツも驚くほど緻密かつ丁寧に作り込まれ、互いの持ち味を引き立て補完する。ちょっとしたきっかけさえあれば、一気にブレイクする可能性を秘めた期待の新鋭。足を運ぶのであれば、今がチャンスだ。

(ラーメン官僚 田中一明)

田中一明
1972年11月生まれ。高校在学中に初めてラーメン専門店を訪れ、ラーメンに魅せられる。大学在学中の1995年から、本格的な食べ歩きを開始。現在までに食べたラーメンの杯数は1万4000を超える。全国各地のラーメン事情に精通。ライフワークは隠れた名店の発掘。中央官庁に勤務している。
メールマガジン登録
大人のレストランガイド