「必要ない」なんて言ってない! have toの意外な意味
デイビッド・セイン「間違えやすい英語・聞き手編」(12)have to
相手が話した英語を誤解して受け取ってしまった。そんな体験はどなたにもあると思います。日本人向けの英語教育で豊富な経験を持つデイビッド・セインさんは「日本人が聞き手として勘違いしやすい英語表現がある」と言います。今回は、中学英語でおなじみのhave toという表現を見てみましょう。
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ユウカとスティーブは最近、大きな仕事を任されて慌ただしくしています。中でもスティーブのほうは重要な会議の手配まで担当させられ、かなり大変そうです。少し手伝ってあげたほうがよいと思ったユウカは、ささやかな手助けをするのですが、それに対するスティーブの言葉にびっくり。もしかして、ありがた迷惑だったかも。それとも……?
それはこんな会話でした。
Steve: I was told to make all of the arrangements for the conference by noon.
Yuka: I already made an outline, if it helps.
Steve: You didn't have to!
Yuka: Oh, sorry. I guess you wanted to do it yourself.
Steve: Um...it's great that you…
Yuka: No worries, I understand. I don't want to bother you.
Steve: Uh...well…
日本語に訳すと、次のような感じになります。
スティーブ:昼までに会議の準備をぜんぶ整えるように言われてるんだ。
ユウカ:プランは作っておいたわ。お役に立つかしら。
スティーブ:それはありがとう!
ユウカ:あ、ごめんなさい。一人でやりたかったのね。
スティーブ:ん~、うれしいんだけどな。
ユウカ:いいの、わかった。邪魔しないから。
スティーブ:あの、その……。
英語では、言葉の表向きの意味とは違う表現をすることがときどきあります。それは心に思っていることよりも肯定的な言い方をする場合もあれば、否定的な言い方をする場合もあります。ポジティブな場合とは、たとえばgoodやokayです。これは言葉のうえでは「良い」「いいよ」という意味ですが、額面どおりに受け取るとぬか喜びする羽目になるかもしれません。実は「まあまあだね」というニュアンスで言われる場合も多いからです。
その反対に、喜びなどの気持ちをネガティブな言い回しで表すこともあります。そんな表現の一つがYou didn't have to.というフレーズです。この英語表現をスティーブの口から聞いたとき、ユウカは学校で習ったとおりの意味でとらえました。日本人ならごく普通のことでしょう。