■安易な手段のケース1 無料ツールの採用
所属する部署で、今期の予算には入れていなかったデータ分析ツールが必要になった。
少しでもコストを抑えたいこともあり、同じ部署でソフトウェアに詳しいAさんに無料のツールを教えてもらった。Aさんはその分野の専門家ではなかったが、さすがソフトに詳しいという評判通り、要望を満たすものを教えてくれた。
会社のツール導入指針に抵触するものではないことも確認できたので、部署の公式なデータ分析ツールとして導入することになった。
その後、無料のデータ分析ツールを使用するために既存のシステムに若干の修正を加えたものの、ユーザー数が増えたときに当ツールが対応しきれないことが判明した。
専門家の詳細な分析の結果、大手ベンダーの提供する有料のデータ分析ツールを導入しなければいけないことになり、新たにツールを購入し、さらに、そのツール用にシステムを再修正する必要が出てしまった。
結果として無料ツールのためにシステムを改変した工数が無駄になってしまった上に、工期も延長せざるを得なくなった。

ツールが必要になった時点で、専門家による分析と推薦を求めるべきでした。単純に目の前の機能だけでツールを選定するというのは、浅薄な判断だといわざるを得ません。

■安易な手段のケース2 納期ギリギリの仕様変更
新製品開発の終盤に重要な仕様の変更依頼が入った。この仕様変更は社長命令ということで、対応しないという選択肢は考えられない。とはいえ、大きな仕様変更で、対応すると期日に間に合わなくなる可能性がある。
一方で、新製品の発売日は社内外に大々的に宣伝しているために、期日を延ばすことは難しい。なんとか間に合わせるために、新製品開発メンバーには徹夜も覚悟してもらわなければならない。
実は、社長以下、重役に掛け合えば、仕様変更の代わりにいくつかの機能を制限して発売日を迎えるという判断もできたが、開発メンバーからその申し出がなかったため、上層部は容易な仕様変更だと捉えてしまっていたようだ。

新製品開発の責任者としては、自身の権限内で仕事を完遂することだけでは役割を果たしたことにはなりません。上位者、より大きな権限を持っている人たちとコミュニケーションをとり、やろうとしていることの成功確率をより高めることに尽力しなければいけないのです。

多くの場合、上層部の方々は、商品やサービスの仕様変更の影響度まで意識していません。一方で、その仕様変更がプロジェクトの成功確率を下げるということがわかっていれば、無理に押し込むような判断はしないことの方が多いはずです。この新製品開発プロジェクトに関わっている人で、失敗を願っている人などいないはずですから。

社長命令とはいえ、仕様変更のリスクを社長以下、重役たちに正しく伝え、少しでもこの新製品開発プロジェクトの成功確率を上げられる(少なくとも下げない)努力をし続けるのが、担当責任者の仕事なのです。

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ワナ4「安易な手段」の脱出法