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賢く「サイレント副業」 勤め先とのトラブル防ぐワザ 『「複業」のはじめ方』 藤木俊明氏

2019/8/28

副業を始めるなら資格取得の勉強など助走期間も充実させたい。画像はイメージ=PIXTA

終身雇用が崩れる流れを受けて、副業が関心を集めている。しかし、まだ副業を認めていない企業のほうが多い。『「複業」のはじめ方』(同文舘出版)を書いた藤木俊明氏は「今は過渡期。したたかな立ち回りが求められる」と、静かなる副業スタートを促す。転職や起業も見据えた副業デビューのノウハウを教わった。

■“好き”や“得意”で稼ぐには

本書の副題は「会社を辞めずに“好き”“得意”で稼ぐ!」。つまり、著者はあくまでも勤め先を退職しない、マルチな働き方を推奨している。編集プロダクションを自営している藤木氏は「自分自身、辞めなくても済んだと、今は思える」という。

トヨタ自動車でさえ終身雇用を守り切れないと認める時代になってきた。「同じ企業で最後まで勤め上げるというのは、現実味が薄れつつある」(藤木氏)。定年延長を受け入れつつ、勤め続ける場合でも、50代以降の年収ダウンは避けにくい。だから、生涯にわたって生計を維持するうえでも、別の収入源を確保したい。

副業には「もう一つ別の」というイメージが強いが、藤木氏は「1つと言わず、2つ、3つの収入源を得られれば、その分、リスクヘッジがきく」と、「ワンモア志向」の先へと背中を押す。タイトルが「副業」ではなく、「複業」になっている理由だ。

だが、現実にはまだ「副業解禁」は世の大勢にはなり得ていない。「ざっくりした感じでは企業の7割以上は認めていないようにみえる」(藤木氏)。日本経済新聞社が大手企業に実施したアンケート調査の結果によると、回答を得た約120社のうち約5割の企業が従業員に副業を認めていた(5月20日付日本経済新聞朝刊)。ただ、「制度化している」と答えたのは19.0%にとどまる。

容認派の残り30.6%は「制度はないが副業を認めている」という立場だ。社員から届け出を受ければ、個別に判断して認めるといった対応がこの30.6%に含まれる。だが、藤木氏はこうしたグレーゾーンが必ずしも「解禁」を意味しないとみる。「申請を出してみると、理由をこしらえて、会社側が認めないケースもある」(藤木氏)。「5割が解禁」は真水の数字ではなさそうだ。

■就業規則によってはリスクも

現場の判断が揺れる過渡期にあって、藤木氏が提案するのは、必ずしも真正直に届けを出さない「サイレント副業」の形だ。「過去に認められた例が少ない企業では、寝た子を起こすようなルール通りの申請は、可能性を断たれてしまいかねない」と、藤木氏はあえて申請を先送りする意味を説明する。就業規則によってはリスクを伴うだけに、慎重な判断が求められる。藤木氏がすすめるのは、社会貢献や公益性の面で意義のある働き方から始める方法だ。

過去にいくつも認められた前例があり、担当部署や上司のジャッジを前向きに期待できる場合は、前例にならって届け出たほうが安心して副業に取り組めるだろう。しかし、「今は同業他社の動きを横にらみしながらの運用が続いていて、判断者が基準を定めきれていない。無難な判断をされてしまうと、せっかくの副業プランがついえてしまう」(藤木氏)。

藤木氏が副業を応援する理由は、ほかにもある。近ごろは働き手の年収ピークを以前よりも若い時期に設定する動きが広がってきた。「45歳程度を過ぎると、年収アップが難しくなり、50代半ばの役職定年で、水準がドンと落ちる」という。落ち込みを穴埋めする意味からも、50代である程度の実入りが望めるような副業が関心を集める状況にあるようだ。

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