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「研究室」に行ってみた。

美しい渓流で見た ハリガネムシがつむぐ生態系の物語 神戸大学 群集生態学 佐藤拓哉(最終回)

2019/8/29

ナショナルジオグラフィック日本版
楽しそうにフィールドワークする佐藤拓哉さん
文筆家・川端裕人氏がナショナルジオグラフィック日本版サイトで連載中の「『研究室』に行ってみた」の転載を始めました。川端氏が最先端の研究室を訪れ、じっくりと研究内容を深掘りする人気コラムです。今回は、不気味なのに目が離せない寄生虫がテーマ。探究心が高まる夏休みシーズンにぴったりです。

◇  ◇  ◇

京都大学の芦生研究林で、深夜、林床をさささっと動き回るカマドウマに会い、翌日の日中、水中のハリガネムシと、サケ科渓流魚、ヤマメやイワナと会った。

佐藤さんが、今回、彼の「研究室」である森で見せてくれた「フルコース」はそのようなものだった。

単一の種というよりも、生態系の中のエネルギーの流れの中に位置づけられた存在として語る部分が大きかったのだが、そういう話題が一段落した後で、今度は生き物の方を中心にもう一度振り返っておきたい。わずかながらフィールドで触れあった「彼ら」をめぐるあれこれについて落ち穂拾い。

まずは渓流魚。

これは美しい。ありていに言って、美しい。

佐藤さんはもともと渓流魚の保全研究者で、サケ科の魚の話題になるともう感情移入しまくりだ。同行した編集者もカメラマンも上級の釣り人なので、芦生研究林のヤマメやイワナの美しさに感嘆していた。ぼく自身も、「宝石のような」とかありきたりの言葉を臆面なく使おう。

だから、今も佐藤さんの心の中心には、宝石のような渓流魚がドカンと居座っているのは無理もない。

「学会で人に会うと『ハリガネムシの佐藤さんですよね』とか、言われるんです。でも、僕は『ハリガネムシを通して、渓流魚の研究をやっているんや』って、声を大にして言いたい。ハリガネムシの佐藤、違いますよ(笑)」

美しい渓流魚と対極にあるのがカマドウマ。

人気がない、というか、ゴキブリなみに嫌われている昆虫として登場し、今回の「エネルギー流」の中でも、行動を操作された上で、単にムチムチした特上の食べ物として扱われるなど、かなりふびんだ。こういった寄生する・されるの関係で、カマドウマ側になにかメリットはあるのだろうか、と素朴な疑問が浮かんできた。

「ああ、それ本当にいい質問やと思います。この系って、カマドウマにとって救いがなさ過ぎるんですよね」と佐藤さん。

捕獲したカマドウマ

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