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田中角栄に学ぶリーダーの条件

大臣は午前2時から猛勉強 「努力の天才」田中角栄

2019/8/22

夜9時、最後の宴席が終わると角栄は自宅に帰るが小長は家には帰らなかった。宴席までは一緒。しかし、そこで小長は角栄と別れ自分だけは通産省にとんぼ返りする。

その当時、通産省は「通常残業省」などと陰口をたたかれていた。向かいの大蔵省と競うようにこうこうと明かりをつけ、働く通産省には大半の役人がまだ残っていた。

■角栄邸、午前0時の深夜便

そんな役人たちと一緒に角栄が翌日の午前2時から読み込む資料を用意し、間違いがないかチェックするのだった。

資料は国会の会期中なら翌日の答弁書、記者会見があるなら想定問答集といった具合。「時代は夜つくられる」の言葉通り、角栄が宴席にでている間にいろいろ物事が動くことも多かった。

「これは耳に入れておかないと」と小長が思うものは報告書にまとめて資料に加え、「これで完璧」となるとそれを部下に届けさせた。

部下は資料を午前〇時には角栄の家のポストに入れる。それを午前2時に起きた角栄が朝までかけて読み込むのだった。

■滑らか答弁の裏に猛烈な努力

角栄の国会答弁の滑らかさには定評があった。しかし、それにはこうした陰での猛烈な努力があったのだ。

確かにアドリブもうまかった。しかし、実は最新のデータや事実関係を正確に押さえていたからこそできる芸当で、根っこには角栄のこうした必死の努力があった。角栄は常に威風堂々、大きな声で自信満々にしゃべるが、数字にしてもファクツにしても「絶対に間違っていない」と思えるまで徹底的に頭にたたき込んでいるからこそできる芸当だった。

世代が変わったせいか、最近では要領よくポイントとなる知識を詰め込み、そつなくしゃべるリーダーは少なくない。世の中にはごまんといる。しかし、それが付け焼き刃なのか、きちんとした背景を持ったものなのか、しゃべっている本人の表情や声のトーンなど細部に必ず表れる。人はそこを見ている。血のにじむような努力に裏打ちされた「才」こそリーダーに求められる真の資質である。

(前野雅弥)

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