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老後2000万円とビリギャルの関係 伊藤元重に聞く

ビリギャルが専門家にツッコミ 経済学(後編)

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NIKKEI STYLE

 ギャルの女子高生が慶応大に合格するまでを描いた「ビリギャル」のモデルとなった小林さやかさんが、様々な分野の専門家に率直な疑問をぶつけます。経済や科学、社会など様々な分野の「いまさら聞けない」を、4月から大学院生になったビリギャルが、あなたに代わって勉強してきます。

日本の借金は積もり積もって1000兆円。ちょっとイメージできない金額で「日本、だめになるんじゃない?」と誰もが思うのも当然だ。でも、学習院大学の伊藤元重教授は「国内総生産(GDP)を少しずつ成長させながら、借金を徐々に減らしていこうとしていて、この6年くらいはちょっと良くなってきたとみています」と教えてくれた。ところが、この話にはまだ続きがあったんです。

(前編)日本経済ってヤバイの? ビリギャルが伊藤元重に聞く

――1000兆円の借金のこと、それに対して日本は何を目指してどんなことをして、それによってどうなってきているかを知ることが大切だということまではわかってきました。

「前回はそこまでででしたね。でもね、最初にお話ししたとおり、経済は、今までに経験したことがないことがいつでも起こりうる。決して安心していいわけではないんですよ」

――やっぱりそうか。そんな単純な話じゃないですよね。

「私はいつも学生に、『前門の虎、後門のオオカミ』という中国の言葉を使って説明しています。いろいろな問題が同時に起きることを表す言葉なんですが、私はここに『当面の出血』も加えて説明するんです」

――虎とオオカミと出血??

「前門の虎が1000兆円の借金。当面の出血は、今も毎年、借金が新たに増えていることを指します。ではオオカミは何か。高齢化です」

――「少子高齢化」ってめちゃくちゃきくけど、人口が減ればその分一人に使える土地も増えるし、東京のすし詰め満員電車もなくなったらラッキーだし、そんなネガティブなことなの?とちょっと思ったりしたことあったんだけど、やっぱり日本にとって高齢化は大問題なんですね。

「団塊の世代が70歳代を超えてきていて、これから医療、年金、介護の負担が増えるんです。借金があるのに負担も増えるんだから大変です。1000兆円もすぐには減らせないし、高齢化も何かやって変えられる問題でもない。だから、まずは当面の出血を止めるために、景気を良くして税収を増やし、毎年の赤字を減らそうとしているわけです」

――さては、10月に消費税率を上げるのも、それですね。

「その通りです。赤字っていうのは、国がいろんな政策に使うお金の額が収入より大きい状態なのだから、本来は使う額を減らせばいいんです。でも、急にゴミ収集や教育、医療とか介護をやめますっていわれたら、国民は怒りますよね。だから、消費税などの税金を増やして、国に入る税収を増やそうとしているんです」

――高齢化が進むのに、消費税率を上げて借金も返しながら医療も介護も充実させるなんて、できるんですか。

「そこが、政治の言い回しなんですよね。借金も返さなければいけないから増税すると言っているけれど、現実には消費税で借金を返せているのではありません。医療とか介護にかかるお金がこれから増え続けるから、消費税率を上げて収入を増やしてなんとか対応していこうとしてるんです」

――やっぱり政府にとっては国民の税収が一番の頼りなんですね。ところで、高齢化で気になるのが年金です。私も払ってますけど、私たち世代は年金をちゃんともらえるのかな。

「年金はもらえます。ただし、今と同じ金額をもらえる可能性は少ないでしょうね」

――やっぱり減っちゃうんだ。

「年金というのは、若者が働いてお金を納め、働けなくなった高齢者に分配するシステムで成り立っています。若者が減って、高齢者が増え続けているから、今までと同じ金額を全員がもらうのは難しくなってしまいました」

――そういわれるとまあそりゃそうか、となりますね。年金制度を作った時は、こんなに少子高齢化が進むって思わなかったんだろうなあ、きっと。

「でも、ここが大切なのですが、『年金はもうだめだ』と皆が逃げてしまうと、お金を払う人が減ってしまうから年金制度が破綻しちゃうでしょう」

――たしかに。破綻したら、ちょっともらえたかもしれないものが、なんにももらえなくなっちゃうかもしれない。

「時代にあわせて制度をどうにか続けていけるようにしないといけないですよね。そのために、受け取れる額が少し減るかもしれないし、年金を受け取れるようになる年齢ももう少し上になるかもしれない。こうやって考えると、年金だけに頼るのは、あまりに危険なことは皆さんもおわかりですよね」

――もしかしてそれが2000万円問題?

「そうですね。働ける間に老後に備えておくことが大切ですよ、というのが2000万円問題から私たちがちゃんと受け取らなければならないメッセージだと思うんですよ」

――なるほど。2000万円問題って政治家さんがまた失言しちゃった問題だと思ってました。そんな大切なメッセージが隠されていたとは。

「あともう一つ、日本はこの先10年とか15年でインフレになります。だから、自分の資産を失わないように気をつけなければいけません」

――ちょっとこれは気になるんですが、インフレって……。

「インフレとは、簡単にいうと物価が上昇することです。インフレには良いインフレと悪いインフレがある、ということをまず押さえてくださいね」

――良いのと悪いのがある?

「良いインフレというのは日本の経済が穏やかに成長していく状態と考えてください。GDPが毎年3%くらい増えていくイメージです。もちろん、そんなに簡単にGDPは成長しませんが、もし物価が毎年3%くらい上昇すると、GDPも成長するんです。だから、良いインフレは日本を救う」

――悪いインフレはイヤな予感ですね。

「穏やかなインフレが起きず、GDPも成長しないのに借金は1000兆円も残ったままだと、どこかで日本に不都合なことが起きたときに、物価が急に10%とか15%、場合によっては30%上昇するかもしれません。ちなみに1973年の第1次オイルショックのときは、物価が23%も上昇しました。これが悪いインフレです。悪いインフレが起きると、日本への信用度もがた落ちになりますから、どんなに高い金利をつけても国債を買ってもらえなくなる。一気に"破綻"の2文字が見えてくるんです」

――そんなに一気に上昇するかもしれないんですか?

「どんなインフレが起きるかわかりませんが、どちらも起こらない可能性は非常に低いんです。たとえ、3%のインフレだったとしても、3年続くと10%近くなるんですよね。つまり、1000万円の預金を持っていても、物価が上がった分、100万円分を実質的には失うことになる」

――だから預金してるだけじゃなくて、自分のお金を守るという意味で、「資産運用」が大事なんだ。

「日本円だけでなく、いろいろな通貨に分散する手もあります。これからは、生きていくために経済リテラシーとか法律を知るリーガルマインドがもっと求められますよね。というわけで、私も健康リテラシーを上げようと思ってるので、これからジムに行ってきます」

――それは一番のリテラシーかも。いってらっしゃいませ(笑)。ありがとうございました。

取材後記by小林さやか

伊藤先生が大学で経済学を勉強し始めたとき、最初に覚えた言葉が「合成の誤謬(ごびゅう)」だったらしい。一人ひとりが「こうすべきだ」と思って行動していても、全体ではその通りにならないことがある。みんながお金をためようと思って貯蓄すると、消費が減って、給料が増えなくて、結局は全体の貯蓄は減ってしまう。そんなことを表す言葉なんだって。「消費税率上げ反対」「年金もらえないんじゃ払いたくない」と言っておきながら、「破綻も絶対させるな」「景気も良くしてくれ」というのは、なんだか身勝手な話のような気がした。人のせいにばかりして、自分ごとにしないのは、何にもならないなあと思った。一人ひとりが「知る」ことを怠らず、少しずつ「知る」を積み上げていくことが、大きな山を動かすんじゃないかな。経済は私たちの生活に直結している。物価、給料、年金……。少なくとも、自分たちにわかりやすく直結しているものくらいは、ちゃんと知っておかないと、これ本当にまずいなと思った。私たちが「自分のこと」しか考えなかった結果、日本経済がどんな道をたどっていくのか、少し想像してぞっとした。さらに最悪なのは、私たちが身勝手に文句ばかりいって死んだあと、愛するこどもたちが残されて生きていかなければならない世界が、今よりもっと大変な状況になりそうだということだ。まずは「知る」こと。それが私たち大人の責任なのだ。

伊藤元重さん
1951年生まれ。74年東京大学経済学部卒、79年米ロチェスター大学経済学博士号取得。専門は国際経済学。東京大学大学院教授を経て2016年から学習院大学国際社会科学部教授。東京大学名誉教授。2013年から6年間にわたり、経済財政諮問会議の議員をつとめたほか、税制調査会委員、復興推進委員会委員長なども歴任している。著書に「入門経済学」(日本評論社)、「ゼミナール国際経済入門」(日本経済新聞出版社)など多数。
小林さやかさん
1988年生まれ。「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話」(坪田信貴著、KADOKAWA)の主人公であるビリギャル本人。中学時代は素行不良で何度も停学になり学校の校長に「人間のクズ」と呼ばれ、高2の夏には小学4年レベルの学力だった。塾講師・坪田信貴氏と出会って1年半で偏差値を40上げ、慶応義塾大学に現役で合格。現在は講演、学生や親向けのイベントやセミナーの企画運営などで活動中。2019年3月に初の著書「キラッキラの君になるために ビリギャル真実の物語」(マガジンハウス)を出版。4月からは聖心女子大学大学院で教育学を研究している。

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