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ビリギャルもう1回勉強するよ

老後2000万円とビリギャルの関係 伊藤元重に聞く ビリギャルが専門家にツッコミ 経済学(後編)

2019/9/9

「良いインフレというのは日本の経済が穏やかに成長していく状態と考えてください。GDPが毎年3%くらい増えていくイメージです。もちろん、そんなに簡単にGDPは成長しませんが、もし物価が毎年3%くらい上昇すると、GDPも成長するんです。だから、良いインフレは日本を救う」

――悪いインフレはイヤな予感ですね。

「穏やかなインフレが起きず、GDPも成長しないのに借金は1000兆円も残ったままだと、どこかで日本に不都合なことが起きたときに、物価が急に10%とか15%、場合によっては30%上昇するかもしれません。ちなみに1973年の第1次オイルショックのときは、物価が23%も上昇しました。これが悪いインフレです。悪いインフレが起きると、日本への信用度もがた落ちになりますから、どんなに高い金利をつけても国債を買ってもらえなくなる。一気に“破綻”の2文字が見えてくるんです」

――そんなに一気に上昇するかもしれないんですか?

「どんなインフレが起きるかわかりませんが、どちらも起こらない可能性は非常に低いんです。たとえ、3%のインフレだったとしても、3年続くと10%近くなるんですよね。つまり、1000万円の預金を持っていても、物価が上がった分、100万円分を実質的には失うことになる」

――だから預金してるだけじゃなくて、自分のお金を守るという意味で、「資産運用」が大事なんだ。

「日本円だけでなく、いろいろな通貨に分散する手もあります。これからは、生きていくために経済リテラシーとか法律を知るリーガルマインドがもっと求められますよね。というわけで、私も健康リテラシーを上げようと思ってるので、これからジムに行ってきます」

――それは一番のリテラシーかも。いってらっしゃいませ(笑)。ありがとうございました。

取材後記by小林さやか

伊藤先生が大学で経済学を勉強し始めたとき、最初に覚えた言葉が「合成の誤謬(ごびゅう)」だったらしい。一人ひとりが「こうすべきだ」と思って行動していても、全体ではその通りにならないことがある。みんながお金をためようと思って貯蓄すると、消費が減って、給料が増えなくて、結局は全体の貯蓄は減ってしまう。そんなことを表す言葉なんだって。「消費税率上げ反対」「年金もらえないんじゃ払いたくない」と言っておきながら、「破綻も絶対させるな」「景気も良くしてくれ」というのは、なんだか身勝手な話のような気がした。人のせいにばかりして、自分ごとにしないのは、何にもならないなあと思った。一人ひとりが「知る」ことを怠らず、少しずつ「知る」を積み上げていくことが、大きな山を動かすんじゃないかな。経済は私たちの生活に直結している。物価、給料、年金……。少なくとも、自分たちにわかりやすく直結しているものくらいは、ちゃんと知っておかないと、これ本当にまずいなと思った。私たちが「自分のこと」しか考えなかった結果、日本経済がどんな道をたどっていくのか、少し想像してぞっとした。さらに最悪なのは、私たちが身勝手に文句ばかりいって死んだあと、愛するこどもたちが残されて生きていかなければならない世界が、今よりもっと大変な状況になりそうだということだ。まずは「知る」こと。それが私たち大人の責任なのだ。

伊藤元重さん
1951年生まれ。74年東京大学経済学部卒、79年米ロチェスター大学経済学博士号取得。専門は国際経済学。東京大学大学院教授を経て2016年から学習院大学国際社会科学部教授。東京大学名誉教授。2013年から6年間にわたり、経済財政諮問会議の議員をつとめたほか、税制調査会委員、復興推進委員会委員長なども歴任している。著書に「入門経済学」(日本評論社)、「ゼミナール国際経済入門」(日本経済新聞出版社)など多数。
小林さやかさん
1988年生まれ。「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話」(坪田信貴著、KADOKAWA)の主人公であるビリギャル本人。中学時代は素行不良で何度も停学になり学校の校長に「人間のクズ」と呼ばれ、高2の夏には小学4年レベルの学力だった。塾講師・坪田信貴氏と出会って1年半で偏差値を40上げ、慶応義塾大学に現役で合格。現在は講演、学生や親向けのイベントやセミナーの企画運営などで活動中。2019年3月に初の著書「キラッキラの君になるために ビリギャル真実の物語」(マガジンハウス)を出版。4月からは聖心女子大学大学院で教育学を研究している。

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