「遠くても経済は世界中がつながっているからね。今もイランの南のホルムズ海峡でイランと米国がもめてます。それ以外にも、中国と米国ももめてるでしょ」
――あの、関税がどうのっていうやつですね。中国とアメリカは、日本と関わりが強そうだから、私みたいな一国民の生活にも影響を感じちゃうぐらいになったら、なんか怖い。
「そんなことを毎日考えてると眠れなくなるから、あまり考えないようにするのがいいのかもしれませんけど、経済の世界ってそんなものなのです。現状がずっと続く社会はありえない。だから、ギリシャやアルゼンチンが破綻寸前になっても、中東で何が起こっても、あまり困らないようにしないといけない。それが政府が必死で取り組んでいる経済の政策なんです」
――なるほど……。それで先生、日本の経済は大丈夫なんですか?政府が取り組んでいる政策って、ちゃんと効いてるの?
「私は世界全体でみたら、今の日本の取り組みはそう悪くないのかなって思ってます」
――でも、日本は借金が毎秒増えてるんじゃないですか。
「借金はたしかに増えてるんです。ちょっと専門用語を使いますよ。国の税金より、使うお金がいくら多いかを示すのが財政赤字ですよね。その分は国が借金してしのいでいます。日本は約30年前の1990年代初頭にバブルが崩壊してから、税収が減った時期があったから借金が増えてしまい、借金の総額をあらわす債務残高は国と地方を合わせて1000兆円にもなるんです」
――ちょっと待って。借金って誰に借金してるんですか。
「国民です」
――私? 貸してるの?
「さやかさんは直接貸したと思っていないかもしれない。でも、さやかさんはお金を銀行に預けるでしょう? そのお金、銀行は金庫に置いたままにしても増やせないから、利子がつくもので運用します。それが国債。国が10年後とか20年後には利子をつけてお返ししますと約束して、国がお金を借りる制度です」
――気づいたら私のお金で国債を買っていたって、びっくりだ。返してもらえるの?
「返してもらえますよ」
――それはお年玉袋みたいなもので?
「自分の分を返してもらうには、銀行からお金をおろせばいいわけです。あと、将来的なことをいえば、将来の世代が納める税金が増えれば、国は借金を返せますね」
――少子化で税金納める人数も減ってるし、ミラクル起きないと難しい気がしちゃうなあ。しかし借金1000兆円なのに、今はまあまあうまくいってるってどういうことですか?
「ひと言でいうと、6年前より景気が良くなってきてるんです。2012年と比べてみましょう。当時、完全失業率は4%台でしたが、2018年は平均2.4%でした。株価もみましょうか。日経平均株価は12年に8200円台に下がったこともありましたが、18年はおおむね2万円台でした」
――なるほど。失業率が低くなると働き手が増えるし株価も上がると税金で入ってくる金額が増えるよね。景気が良くなるってそういうことか!
「その通り。そうすると、GDPが成長します」
――出た。GDP。よく聞くやつ。経済は略語が多いですよね。